Chapter3 牢獄を抜けて
Chapter 3-1
黒装束を纏った一人の少女が、気配を殺して邸内に潜入した。
彼女に気付く者はなく、少女はひっそりと深部までの侵入を果たす。
そこで彼女は、更に地下へ続く隠し通路を発見した。
慎重に周囲の人気を窺いつつ、彼女は地下へと潜って行った。
※ ※ ※
メイドから食事の乗ったトレイを多少無理を言って受け取り、水輝は廊下へ出た。
瞬間、水輝は誰かの気配のようなものを僅かに感じたが、それはすぐに霧散した為、気のせいだと割り切って歩を進めた。
先日のパーティーは特に得られるものもなく終了した。姫奈多との出会いは収穫と言えば収穫であったろうが、彼女にはどこか歩み寄り難い雰囲気があるというのが最終的な印象だ。彼女との距離は慎重に計っていく必要があるだろう。
水輝はそう考えながら、自宅の最上階に上がった。
五階建ての邸は荘厳な建て構えで、世界的な大企業の一人息子と言う彼の本来の身分を如実に示していた。だが当の水輝にとってはそんなものは飾り同然で、何の意味もない。彼にはそれよりもっと、大切な物がある。
最上階の奥にあるドアの前に立ち、ノックする。
「水輝です。入ってもよろしいでしょうか」
水輝の口から発せられたのは、流暢なフランス語だった。
ドアの中から、同じくフランス語での返事が返ってくる。
「どうぞ」
部屋の中には一人の女性がいた。水輝と同じ金髪碧眼の彼女は、開け放った窓の前に椅子を立て、腰掛けている。
「食事をお持ちしましたよ、お母さん」
水輝は近くのテーブルにトレイを置いた。
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