Chapter4 万野樹里
Chapter 4-1
翌日、例の三人が無事だった事を赤羽から聞いた。
しかしまだ、話を聞ける状態ではないらしい。
昨日京太から聞いた話は、アトリエ内で共有済みだ。赤羽については綾瀬に連絡を取り、現状を伝えてはある。
「わかりました。問題はないかもしれませんが、しばらくはご注意を」
そう念押しされたが、彼女の言う通り問題はないように思える。
なので目下、注視すべきは樋野の足取りだった。扇空寺の『眼』ですら彼の行方は追えていない。
いったいどこへ消えてしまったのか。
ともあれ、喜ぶべきこともある。
絹枝の体調が回復したため、今日から一緒に登校できるのだ。
「絹枝ちゃん、よかったね!」
「無理はしないようにね」
「うん、ありがとう、二人、とも」
朔羅たち三人は揃って『螺旋の環』を出た。
「あ、水輝君、おはよー!」
「おはようございます」
「おや、そちらの方は?」
「あ、絹枝ちゃん。この人は月島水輝君っていって、私たちと同じ魔法使いなんだよ。水輝君、こっちは鞘上絹枝ちゃん。一昨日『螺旋の環』に来てくれた子で、サツキさんの娘さんなんだって!」
途中で出会った水輝と挨拶を交わし、四人はともに学校へ向けて歩き出す。
道中、話題は魔法についてになる。
「私たち魔法使いは、生まれつき魔力を持っているわ。その魔力は、人によって別の属性を持っているの」
火、水、風、地。四大元素と呼ばれる世界に満ちる属性。魔法使いは自らの持つ魔力回路と呼ばれる特殊な神経と調和することで、初めて魔力というエネルギーを生み出せるが、そうして生み出した魔力は基本的に何の形も持たない気体のようなものだ。
ところがこれを四大元素と掛け合わせると、魔力はその性質を得て顕現する。これこそが四大元素魔法と呼ばれる、現代において最もポピュラー且つ利便性に優れた魔法系統だ。
「私と水輝君は風。絹枝はそうね……、火、じゃないかしら。サツキさんもそうだったし」
また、魔力回路は個々人により適合する四大元素に違いが現れる。それは先天属性と呼ばれ、魔力回路が持つ属性そのものと言ってしまってもいいだろう。
「朔羅ちゃんは?」
「うーん、そのー、私はー……」
「朔羅はね、先天属性が未だに分からないのよ」
しかし例外というものも無論存在する。朔羅の場合、適合する四大元素がまだ見つかっていない。彼女が『螺旋の環』で暮らし始め、魔法使いとしての修業を始めておよそ10年が経っているにも関わらず。
一応、四大元素魔法の修練は続けてみてはいるものの、朔羅自身を含めた誰もが彼女の魔力回路に適合する四大元素はないのだろうと結論付けていた。
「そう、なんだ……。朔羅ちゃん、どんまい」
「ふぐっ、無邪気な励ましがぐさっと心に刺さりそうです先生!」
「誰が先生よ誰が」
「うーん、平和ですねぇ」
そんな話をしている内に学校に辿り着く。
水輝とは昇降口で別れ、朔羅たちは自身の教室へ向かった。
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