Chapter 2-2
登校中、朔羅は口許に手を当てて考え込むような姿勢で歩いていた。
――あの人、どこかで……。
写真の男性。朔羅はあの奇妙な容貌をした彼に見覚えがあるような気がしていた。
もちろんあんな大型のバイザーを付けた人物など見た事はない。だが写真から感じ取れる雰囲気には、何故か仮面の奥の素顔を知っているような気にさせるものがあった。
ただ、どれだけ考えても思い当たる人物は見当もつかないのが現状だったが。
「朔羅?」
「え?」
絹枝に呼びかけられ、朔羅は顔を上げる。
視線の先には、心配そうに自分を見つめるなぎさの姿があった。
「どうしたの、朔羅。体調悪いならちゃんと言いなさいよ」
今朝の頭痛の件もあり、なぎさが心配するのも無理はない。
「大丈夫大丈夫! 元気元気!」
「そう。ならいいけれど」
「それよりさ、あの写真の人、どっかで見たことある気がしない?」
「言われてみれば……。どこだったかしら……」
なぎさも記憶を思い返してみるが思い当たる節はないようだった。
「それにしてもあの、バイザー? なんであんなの付けてるんだろ」
「目が光に弱い……だけじゃなさそうね」
「うーん……。はっ!?」
朔羅は目をカッと開いて手を叩く。
「正体を隠すため……!!」
「ドヤ顔で言うのやめなさい」
「――な、何でもします! 何でもしますから! 頼む――いや、お願いします、命だけは勘弁してくださいぃッ!!」
「――!?」
そんな折、二人の元に絶叫が響く。そちらに視線を向けると、そこには四人の男子生徒がいた。
斜に構えて立つ一人の前で、他の三人が地面に這いつくばるような姿勢で彼を見上げている。悲鳴を上げたのはその這いつくばった三人の内の誰かだろう。
どう考えても、恐喝か何かの現行犯であった。
なのだが。
「京太君!?」
朔羅はその姿を認めると同時に駆け出していた。彼らの前にバッと躍り出る。
「ちょちょ、ちょっと、何してるの!?」
「あん? おう、朔羅じゃねぇか」
血気盛んに飛び出した朔羅の声に、恐喝犯であろう彼が振り返る。朔羅より遥かに高い長身、整髪料で逆立てた髪が特徴的な彼を、朔羅は知っていた。
いや、知っているどころではない。
「ひ、ひぃっ!!」
するとその隙を突いて、這いつくばっていた三人が一目散に逃げ出す。彼らはあっという間に通学路の向こうに消えてしまった。
「ちっ、あいつら……!」
三人が走り去った方を見やり、彼――
「ったくよ、お前のせいで取り逃がしちまったじゃねぇか」
「へ?」
「どういうことかしら、扇空寺君」
「……別に。こいつぁウチのシマの問題だ。お前らにゃ関係ねぇよ」
そう言って踵を返すと、京太はさっさと歩き去ってしまった。
「ちょ、ちょっと! 京太君!!」
朔羅の声は届かず、京太の姿は朝の街並みの中に消えて行った。
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