Chapter 4-3
「年下かなとは思っていたけれど、中学生だったなんてね」
あやめの素性は彼女自身が粗方説明してくれた。私立白凰学院中等部三年生。今年で十五歳になるという。落ち着いた佇まいが年齢を意識させない雰囲気を形作っていた。
「驚きましたね。京太君に妹さんがいて、四条の養子になっていたなんて知りませんでしたよ」
扇空寺組先代頭領と、四条家の娘の間に生まれたのが京太とあやめだ。夫妻が没して以後、四条の治癒能力を色濃く受け継いだあやめは母の生家である四条の養子となった。
あやめは年に一、二回は京太に会える機会があると話していた。彼女は微笑みながら話していたが、どこか無理に作ったような笑顔にはいたたまれない気持ちになる。
それはどこか、彼女に親近感を抱いていることの表れなのかもしれなかった。
朔羅たちは夜空を見上げた。都会から隔絶された竹林の奥では星がよく見える。
「うがーっ!!」
突如としてこれまで沈黙を守ってきた朔羅が奇声を発し、なぎさと水輝は驚きを露わに彼女を振り返った。
両腕を掲げて硬直した姿勢の朔羅は、やがて深く息をして腕を降ろした。目を開けた彼女の眼差しにはもう先ほどまでの打ちひしがれた悲嘆の色は見えなかった。
「私決めたよ。空ちゃんを助ける。友達だもん」
朔羅は一度決めたことは頑として譲らない。頑固とはややニュアンスが違うのだろうとなぎさは思っている。ただそれを成すと決めることが朔羅の原動力であり、且つ為し得ることこそ朔羅の魔法使いとしての資質を如実に示していた。
「ええ。京太君が動けない今、僕たちが空さんを助けないと」
水輝の言葉に朔羅となぎさは頷く。戦う理由などそれだけで充分だ。
大切な友人が囚われている。彼女を助けるために大義も名分も必要あるものか。
「姐さんがた、よろしいでしょうか」
そこへやってきたのは不動だ。彼は頭を下げて続ける。
「鷲澤から通達がありやした。月島ホールディングス本社ビルで待つ、と」
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