Chapter 2-4

 仏壇に手を合わせる。上には四人の遺影が並んでいた。その内の一人、京太の祖父にして先々代頭領・辰真には大事な剣と義を教わった。


 ――見ていてくれ、じいちゃん。必ずケリは付けてみせる。


 鷲澤は全面戦争の話を受けた。今夜、すべてが決まる。


 仏間から出ると、外には艶やかな着物に着替えた紗悠里が控えていた。


「いくぜ紗悠里。まずは腹ごしらえだ」

「かしこまりました、若様」


 次に京太が向かったのは、大広間だった。近づくほどに大きくなる喧噪けんそう

 襖を開くと、中では大勢の強面たちが我先にと鍋をつついていた。


 京太は大きく息を吸って口を開く。


「よし、やってるなお前ら! しっかり食って気合入れろ!!」

「ウス!! 男、上げさせていただきやす!!」


 声を揃えて返ってきた返事に、京太は頷き、小上がりにある自分の席に着く。


「若、火つけます」

「おう」


 京太の鍋に火を付けたのは、長い髪を一つにまとめた傷だらけの少年だった。

 武藤棗むとう なつめ。紗悠里とともに京太の側近を務める少年だ。


「棗、切り込み隊長は任せるぞ。やれるな?」

「押忍。もちろんっすよ」

「うっし、お前もしっかり食っとけよ」


 肉がいい色になってきたところで、京太は箸を取って鍋に手を付けた。

 どんどん皿に取って、どんどん口に運んでいく。


 どんどんと飯をかきこんでいく京太を見て、棗も負けじと食べ始める。


 やがて食べ終えた者から広間を出ていく。

 京太も完食すると、身支度のために広間をあとにする。


 歯を磨き、髪を整えて着替える。袖を通したのは赤みがかった黒い着物だ。

 帯を巻き終え、離れへ向かう。外はもう、完全に夜のとばりが降りていた。


 離れは道場となっており、京太は礼をして中に入る。

 この道場で、京太は今は亡き祖父によってきたえ上げられた。思い返すと厳しい日々だったが、今となっては感謝しかない。


 道場の奥には大振りの刀が一本、飾られていた。京太はそれを手に取る。


「行くぜ、相棒」


 それは京太の身の丈をはるかに凌ぐ大太刀だ。それを片手で持ち上げ、腰にいた。


 準備を終えて道場から出ると、外には強面たちが整列して佇んでいた。

 その先頭に立つ紗悠里が、京太に外套を着せる。背には一文字、「龍」の字が刻まれていた。


「若様、お願いします」


 紗悠里に促され、京太は口を開く。


「全員、いい面してるじゃねぇか。遠慮は要らねぇ、魔的な奴らは片っ端からたたっ斬れ。先々代、扇空寺辰真が亡くなって、奴らは俺たちを舐め切ってやがる。俺たち退魔の存在がどれほど恐ろしいか、思い出させてやれ!」


 拳を振り上げた男たちの雄叫びが、夜空にごうと響き渡った。

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