第9話
*****
帰途は、診療所の医師が最寄り駅まで車で送ってくれた。
ローカル線を乗り継ぎ、最終の新幹線にどうにか乗り込んで、グリーン車のシートに腰を埋める。
駅ナカで仕入れてきた紙カップ入りのレギュラー・コーヒーでヒトココチつき「ホーッ」と深くタメ息をつくと、
「ねぇ、祭守」
「はい?」
真っ暗な車窓の外を眺めていた
カットソーとカーゴパンツの身軽な軽装もあいまってか、旅の疲れも見えず涼しい顔だ。
かたや
「祭守は、どうしてオレなんかを同行させてくれたんです? 今回の旅に」
「…………」
他愛もない答えをすぐに返すと思いきや、
それから、あまり表情筋が発達していなさそうに見える頬辺に、めったにお目にかかれないような無邪気な笑顔をのぞかせると、
「
と、ほんの少しキマリが悪そうにささやいた。
「はぁー、なるほどです」
「熱いから、気をつけてください」
「ありがとう」
「ボクの人選は間違ってなかったでしょ?」
「は?」
「
と、今度は大まじめな顔つきで言った。
―――この浮き世ばなれした天然っぷりには、どうしてもタチウチできそうにない。
たまらずギュッと目を閉じると、到着駅まで、ひたすらタヌキ寝入りをキメこんだ。
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