第2話

月御門つきみかど神社』の総本殿は富士山麓にあるので、『榛名はるな 月御門つきみかど神社』は、国内に数か所ある分祀ぶんしのうちの一社ということにはなるが、

榛名はるなのところの祭守さいしゅは、ミドコロがある」

と、一族の間でも聞こえが高い。


祭守さいしゅというのは、月御門つきみかど神社の宮司だけに昔から与えられる、独自の呼称である。


月御門つきみかど家の起源ルーツをさかのぼれば、陰陽師おんみょうじの代名詞ともいうべき安倍 晴明あべのせいめいを輩出した陰陽師界の名門土御門つちみかど家の始祖にたどりつく。


一族にのみ伝えられる伝承によれば、月御門つきみかど家は、『かぐや姫伝説』とも深い因縁がある。

かぐや姫の昔話に登場する「みかど」こそ、月御門つきみかどの英雄たる安倍 晴明あべのせいめいその人だというものだ。


かぐや姫の正体は「影夜姫かげやひめ」という凶悪な荒神あらがみであるとされ、月御門つきみかど神社の総本殿には、影夜姫かげやひめ荒魂あらたまを封印するほこらもある。


月御門つきみかど神社の役割は、安倍 晴明あべのせいめいが富士山麓に結界をはって封印した荒魂あらたまほこらを代々守り続けるとともに、現世にはびこる数々の悪霊や魑魅魍魎ちみもうりょう調伏ちょうぶくすることなのだ。

そのため、月御門つきみかど祭守さいしゅの最若手である陽向ひなたも、陰陽師として数々の呪法をあやつることができる。

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