花しずめのひつぎ
こぼねサワー
第1話
「
年若い
「そう、くちべらし!」
薄桃色の花柄の振袖がよく似合う少女は、おぼえたての言葉を自慢するみたいに大きな声をあげてから、ハッとしたように口をつぐんだ。
それから、小柄な少女の身長にあわせて腰をかがめてくれた宮司の耳元に可憐な薄朱色のクチビルを寄せると、大事な秘密を打ち明けるように声をひそめて、
「おハナは、くちべらしのために、
「……おハナは、"
「ううん、知らない。おっかさんが言ってたもん、『おハナはアタマのネジが足りないんだ』って。だから、むつかしいことは分かんないんだ」
あっけらかんと答える。
宮司は、清らかに日焼けした
「ハナシズメになるって、すごくいいんだ。こーんなキレイなオベベ着せてもらって。おっきな赤いキノコをいっぱい入れたシシ鍋に、ツキタテのオモチもいーっぱい入れてもらったんだ。おハナ、とっても幸せだったぁー」
と、両手を胸の前で組み合わせて、ウフフと笑う。
繊細な白い顔にほんのりと血をのぼらせたこの愛くるしい少女が、すでに200年近くも前に亡くなった死者だとは。
よもや、誰が気が付こう。
もっとも、落雷で焼け落ちた桜の老木の根元にユラリと立ち上がるおハナの姿を見ることができたのは、この年若い宮司と、その側近として付き従っている
北関東の山中にある
「そう。おハナが幸せだったというのなら、よかった。本当によかった」
ふだんは和装の上衣と銀紋の刺繍が入った紫紺の
じゃっかん17才の少年とあれば、そのへんの男子高生と見分けもつかなくなりそうなものだが。
物心ついた頃から絵本よりも
"最寄り"の駅から2時間近くも休まずに歩き続けてきたのに。まるで疲れも見えないし。
初めて宮司の旅の補佐役に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます