別れ

 強い風が吹いている。俺は加賀谷に笑いかけた。

「じゃあな、加賀谷。俺がいなくなっても泣くなよ」

「……泣かねーし」

 といいつつ、ごしごしと目を袖で吹く加賀谷。可愛い。

「ラインしろよ」

「するよ」

「俺もするから」

 ん、と加賀谷が手を差し出してきた。

「握手」

「ふふ、なにそれ」

 と言いながら、加賀谷の手を握る。温かさが伝わってくる。ぽたり、と加賀谷の涙が俺の手に落ちた。加賀谷の手を持ったまま、それを口元に持っていって口に含んだ。

「!?」

 という顔で加賀谷が見ている。

「見たか、俺の愛を」

「俺のこと好きなの?」

「友達としてな」

 校庭を歩いていく。振り返ると、加賀谷が大きく手を振っていた。俺も振り返す。これきりにはしたくはなかった。ひとまずの別れ。風が吹いていた。

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若葉の短編集 はる @mahunna

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