【後日談】④


「ったく、今までさんざんソーマに世話になってきたのによう!」


「ギルドマスターには失望した!」


「むしろソーマに今まで以上に護衛を付けてもいいのに、ターリア殿は何を考えているのだ!」


「ちょっとみんな、落ち着いて。たぶんターリアさんにも仕方がなくだと思うよ」


 冒険者ギルドからパーティハウスへ帰る道中もみんなは怒りっ放しだ。たぶんターリアさんも仕方なくといった感じなのかもしれない。


 良く考えてみると、これまでずっとAランク冒険者であるみんなを独占してきたわけだし、護衛の依頼料も冒険者ギルドが持ってくれていた。さすがにこのままずっとみんなに護衛をしてもらい続けるわけにもいかないのかもしれない。


「そうだ、俺がみんなに指名して護衛をお願いするっていうのはどうだろう? そうすれば、みんなにこのまま護衛をお願いし続けることってできないかな?」


「いや、さすがにソーマから依頼料なんて受け取れないぞ」


「ああ。それにぶっちゃけると、俺らの依頼料は結構高額になっちまうしな」


「さすがにソーマだけ無料にしたら、他の冒険者や冒険者ギルドにいろいろ言われそう」


「駄目かあ……」


 それが唯一の解決方法だと思っていたけれど、どうやらその手段は使えないらしい。というか、やっぱりAランク冒険者3人での護衛は結構な金額になるみたいだ。


 むしろ、聖男であるから、これまでずっと優遇して護衛を続けてもらってたのだろうな。


「……とりあえず、時間はまだあるみたいだし、少しみんなで考えてみるとしよう。しばらく考えてみれば良いアイディアも浮かぶかもしれない」


「そうだな。ちょっと考えてみようぜ」


「了解」


 とりあえず、今日はもう遅いし、各自でいろいろと考えてみることになった。なにかうまい方法があればいいんだけれどなあ……





 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「……う~ん、どうしたものかなあ」


 そして翌日。昨日の夜は今後のことをずっと考えていた。


 やっぱりどう考えても、護衛をしてもらう人はみんな以外考えられない。しかし、そうなるとみんなに護衛をしてもらう正当な理由が必要になるわけだけど、うまい理由が思い浮かばなかった。


 相変わらずお金はこれ以上いらなかったので、今回のドラゴンの件についてはほとんど報酬を受け取らなかった。その報酬として国王様に泣きつくという手段もあるが、どちらにせよみんながずっと俺の護衛をして冒険者活動を一切しなくなるのも問題だ。


 逆の発想で、俺が冒険者登録をしてみんなのパーティに入るということも考えたが、この街の治療所での治療を止めるわけにもいかないし、たぶんみんなにも止められそうだ。本当にどうしたものか……




「あっ、みんなおはよう」


「おはよう、ソーマ」


「おう、おはようソーマ」


「ソーマ、おはよう」


 俺が自分の部屋を出て下の階へ降りると、すでにみんなは起きていた。いつもこの時間に寝ているフェリスまで起きているのは珍しいな。


「今日はみんな早いね。待ってて、今から朝食の準備をするよ」


「ちょっと待ってくれ、ソーマ。朝食の前に少し大事な話をさせてくれ」


「大事な話?」


 いつものように朝食の準備をしようとしたところでエルミーに呼び止められた。


「ああ。実は昨日の夜の間にこれからのことを3人で話していたんだ」


「じっくり考えた」


 どうやら昨日ターリアさんに言われたことについて、俺以外のみんなで話し合っていたらしい。


「……いざとなると緊張するな」


「ああ、エルミーの気持ちは分かるぜ。下手をしたら、あのドラゴンともう一度戦う方が気は楽かもしれねえな」


「一世一代の大勝負!」


 いや、さすがにいくらなんでも、あのドラゴンともう一度戦うのは絶対に嫌だぞ……


「ソーマ、私たちと結婚してほしい!」


「………………けっ、結婚!?」


 はいっ!? 結婚!? なんで、夢じゃないよね!?


 というか、付き合うとかすっとばして、いきなり結婚!?


 駄目だ、思考がまったく追いついてこない!


「ああ、みんなで話し合ったんだが、ちょうどいい機会だったのかもしれねえ。さすがに俺たちがソーマと結婚すれば、依頼なんて関係なくソーマといつまでも一緒にいられるだろ」


「結婚すれば冒険者ギルドも他の護衛の女を付けるなんて言わない。ソーマとは長い間一緒に過ごしてきたけれど、プロポーズをして振られて気まずくなることが嫌で、今まで言うことができなかった」


「先日のドラゴンとの戦いで、私たちは一度死んでしまったが、ソーマのおかげで生き返ることができた。だが、もうあんな奇跡は起こらないかもしれないし、悔いを残したままでいたくないんだ」


 そうか、みんなも同じ気持ちだったんだな。


「嬉しいよ、俺もみんなと同じ気持ちだったんだ。むしろ俺の方からお願いしたい、俺と結婚してください!」


「ほ、本当か、ソーマ!」


「う、嘘じゃねえよな!」


「ゆ、夢じゃない!?」


 みんなも本当のことなのか信じられないらしい。正直なところ、俺もこれが夢なんじゃないかと思ってしまうくらい嬉しい。まだ先日の疲れが取れていなくて、布団の中で夢を見ているなんてことはないよな……


 いきなり結婚っとも思ったけれど、よく考えてみたら、もうだいぶ長い間みんなとは同棲しているようなものだもんね。


「俺の方が信じられないよ。でも、俺としてはプロポーズは俺の方からしたかったかなあ」


「いや、普通プロポーズは女がするもん……ってそうか。ソーマの世界じゃそれも逆なんだな」


「最近は女性の方からプロポーズすることも多いんだけれどね」


 すでにみんなには俺の貞操が逆転している世界のことは話してある。


 最近は女性からプロポーズすることもあると聞いているけれど、俺としては男らしく俺の方が告白したかったかもしれない。いや、結果的にみんなと結婚できるのならどっちでもいいけれど。


「……ってことはもう我慢しなくてもいいってことだよな!」


「ソーマの身体触ってもいい?」


「ちょ、ちょっと待て! フェリスもフロラもはしたないぞ!」


「………………」


 そ、そうか。結婚をするということはそういうこともできるわけだよね。


 むしろ、俺の方こそ今までどれだけ我慢をしてきたことか!


「んっ、でもちょっと待てよ。これって誰が一番最初にソーマとんだ?」


「……ソーマの初めては譲れない!」


「んなっ!?」


 そういえばこの世界は男性の童貞に価値があるんだっけ。


「とりあえずエルミーははしたないことをしないんだよな。あとは俺とフロラか。悪いがこればかりは譲る気はねえぞ!」


「私も絶対に譲らない!」


「ちょっ、ちょっと待て! それとこれとは別の話だ! 私だってソーマの初めては譲らないぞ!」


 ……あれっ、なんかおかしな話になってきたぞ。


「ちっ、それならソーマに選んでもらおうじゃねえか! それなら異存はねえだろ?」


「それなら文句はない!」


「そうだな。一番最初はだれがいいかソーマが選んでくれ!」


「………………」


 ちょっ、さすがにそんなの選べるわけがない! 3人とも同じくらい好きだし、誰と最初にするか選ぶなんて、童貞の俺にはできっこないぞ!


「ええ~と、俺は3人とも大好きだから、ここは以前に教えたじゃんけんで決めるって言うのは……」


「当然だが、ここで運に任せるなんていうのはなしだぞ!」


「おう、きっちりと選んでもらおうじゃねえか!」


「ソーマが誰を選んでも、文句はない!」


 ……いや、この状況で誰を選んでも問題しか起こる気がしないんだけれど!


「さあソーマ、この中で誰を選ぶんだ! 私だよな!」


「俺だよな!」


「私!」


「………………」


 みんなと結婚できることになったがひとつだけ問題が残ってしまった……


 助けて聖男様!




――――――――――――――――――

 後日談をお読みいただき、誠にありがとうございます(о´∀`о)


 そんな訳でいったんこちらの物語はここまでとなります。もちろん番外編としてこの先を書く可能性はまだありますがw


 先月ファンタジア文庫様から書籍版の第1巻が発売されております。

 内容はWEB版とは異なっておりますので、まだご購入されていない方がおりましたら、ぜひともよろしくお願いいたしますm(_ _)m

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【書籍1巻5/17発売】男女の力と貞操が逆転した異世界で、誰もが俺を求めてくる件〈WEB版〉【完結】 タジリユウ@カクヨムコン8・9特別賞 @iwasetaku0613

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