大好き

 最初は、驚いた。

 だって、彼の部屋のベランダがなんだか変だなと思って、カーテンを開けたら、男の子が二人、くつろいでるんだもん。

 真穂君は、五歳か、六歳くらい。律君は、十六歳か、十七歳くらいかな。

 年は離れていたけど、兄弟みたいだった。

 彼の、兄弟みたいだった。

 でも、顔はみんな、あんまり似てないかも。

 私は、二人のことが、すぐに大好きになった。

 彼と同じくらい、大好きになった。

 あぁ、思い出しちゃった。

「朔斗君、嫌われてないよ」

 何回繰り返しても、分かってくれないの。

 私は、彼のことを嫌ってなんかいないのに、分かってないの。

 堂々巡りをずうっと続けて――

 あぁもう私、嫌われてるんだな、って。

 優しい彼と沢山話したくて、優しく答えてくれる彼にちょっと期待なんかしちゃって、優しい彼に心を開いてほしいなんて思って、やっと、嫌われていることに気が付いた。

 馬鹿。私は馬鹿だった。一方的な考えで行動して、結果的に迷惑だけ掛けて――

 その時。

「僕、衣澄さんのこと、好きになってしまったみたい」

 なってしまったって。

 駄目なことみたいに。

 みたいって。

 他人事みたいに。

 まあ、そういう訳で、お付き合いをすることに――

 なってないの。

 次の日に会う約束をして、どこにしようかって。

 どこに。

 どこに……。

 どこに……?

 私には、分からなかった。

 彼にも、分からないみたいだった。

 それで、彼のお家にお邪魔することになったの。

 普通、ベランダに子供がいたら、気になって気になって仕方ないでしょ。

 なのに、びっくりしながらカーテンを閉めて、何だか、嬉しかったの。

 不思議。

 分からないことばっかりだよ。

 彼だって、分かっているような、分かっていないような、そんな感じだった。

 ずっと一緒にいるんだって、それだけだった。

 でも、それだけでいいの。

 彼と、真穂君と、律君が、とても幸せそうだったから。

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