だれかさん

「あ、お疲れ様です」

 朔斗君の、よそゆきの声。

 ぼくは、律君の後ろに隠れ、大きな背中に顔を埋める。

 誰かさんの声が、頭にがんがん響いて、気持ち悪い。

 朔斗君は学校にいると、時々、誰かさんと話をすることがある。

 衣澄ちゃんも、このうちの一人だったのかな。

 衣澄ちゃん。

 思い出して、さっき別れたばかりの衣澄ちゃんに、また会いたくなってしまった。

「真穂」

 律君に、ぽんぽんと腕を叩かれる。

「ぅん……?」

「大丈夫?」

 朔斗君が屈んで、ぼくの顔色を窺っている。

 誰かさんは、いつの間にかいなくなっていた。

「うん……」

「行ける?」

「どこに……」

「図書館だよ」

 図書館。

「行く!」

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