やだ

「そろそろ、帰ろうか」

「えぇー……。やだぁ……」

「うーん、嫌かぁ……」

「嫌」

「朔斗、お風呂入ったり、ごはん食べたり、宿題やったりで、忙しいから。な」

「やだ!」

「だが、疲れただろ」

「疲れてない! もうちょっとあそぶ!」

「朔斗を困らせるんじゃない」

「いや、分かった。ちょっとだけだよ」

「うん!」

「いいのか?」

「大丈夫、大丈夫」

「そうか」

 砂場へ駆けていく背中に、二人の会話が遠くなる。




「帰るぞ」

「えぇ……」

「約束だろ」

「うん……」

 朔斗君との約束だから、絶対に守るんだ。

 まだ遊びたいけれど、片付けて、また、律君と朔斗君と手を繋いで歩き出す。

 ……眠い。

 とても、眠い。

「だっこしてぇ……」

「ほら、言わんこっちゃない」

 言いつつ律君が、抱っこしてくれる。

「はい、ただいまだよー」

 目を覚ますと、アパートの駐車場だった。

「真穂君、おいで」

「頼む」

 律君が軽々と跳び、ベランダに降り立つのを、朔斗君に抱っこされながら見届ける。

「階段で上がればいいのに」

「面倒だ。真穂、来い」

 律君が、室外機の上で待っている。

「真穂君、起きてる?」

「おきてる……」

 朔斗君の力も借りて、跳ぶ。

「よし」

 あっという間に、律君の腕の中だ。

「お片付け、よろしくねー」

「はぁい」

「あぁ。……真穂、まだ寝るな。片付けだ」

「うん……」

「真穂!」

「はぁい……」

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