おでかけ

 するする、きゅるきゅる。

「どうしたの、朔斗君」

「公園、行こうか」

「行く! 行く行く! ちょっとまってて!」

「うん、慌てなくていいよ」

「分かった! 律君、ボールもってこ! あとさ、紙ヒコーキの新作、ためそうよ!」

「あぁ」

 律君と二人で、持っていくものを掻き集める。

 ざっ、ざっ、と、足音がする。

 低い壁の真ん中にある格子の隙間から、足音の出所を探す。

「あぁぁ!」

 朔斗君が、アパートの駐車場から、こちらを見上げている。

「まってぇ!」

「大丈夫。待つよ。ゆっくりおいで」

「うん……。律君、わすれもの、ない?」

「無いと思う。近くだし、何かあったら戻ってくればいい」

「そうかな……」

「行くぞ」

 律君が、ひょいっと跳んでベランダの柵を乗り越え、姿を消してしまう。

「あぁ! 律君、まってよぉ!」

 エアコンの室外機によじ登り、下を覗く。

「来い、真穂」

 律君が、朔斗君の隣で、両手を広げて待っている。

「うん……」

「大丈夫だ」

 少し、怖い。

 ベランダの柵の上から、律君のいる所までは、ぼく四人分くらいの高さがある。

「迎えに行こうか?」

 朔斗君が、優しく言ってくれる。

「いい!」

 律君と同じにしたい。

 それに、律君が必ず、受け止めてくれる。

「真穂」

 応えるように、ベランダの手摺を蹴って跳ぶ。

 ふわ。

 浮いて、少し引っ張られる。

「っ……」

 目を開けると、律君の腕の中だった。

「上手にできたじゃないか」

「できた!」

「じゃ、行こうか」

 右手に律君の左手を、左手に朔斗君の右手を握って、歩き出す。

 律君の手は大きい。

 でも、朔斗君の手は、もっと大きい。

 昔は、律君のよりは小さかったんだけどな。

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