第46話 コンカツ

《エピローグ》

 珍しく寝坊した。

 パートナーの懸案事項が解決して、油断したのかな?


「肩がめちゃくちゃ軽くなった。これなら、甲子園も夢じゃないね」


 目覚まし時計という現実を直視したものの、僕は夢物語の続きを紡ぐよ。

 ゆっくりとまぶたを閉じるや、チアリーダー姿の睡魔に誘われていく――


「久能くん、起きてください! 遅刻しちゃいますよ」


 堀田さんの声が聞こえた。でも、気のせいの気がする。間違いなし。


「う~ん、休日くらいゆっくり寝かせて……」

「会社勤めでクタクタなサラリーマンですかっ。土曜日だって、お昼まで授業があります。今更ですよね? ゆのんさんと澪さんが待ってますから」

「うぃ~っす」

「シャキッと!」


 土曜授業という理解を拒むワードに打ちひしがれつつ、流れ作業で支度を済ませた。

 堀田さんが、ノロマな僕を急かすように手を引っ張っていく。


「お待たせしました。やっぱり、二度寝でした」


 氷山泊を出れば、燦々と眩しい日差しが出迎えてくれた。


「明爽くんがビリなんて珍しいよん。ひょっとして、昨晩はお楽しみだったのかい?」

「遅いっ。弛んどるな、久能明爽! 貴様は珀ゆのんではなかろうに」

「……辛辣が過ぎるぜ、澪ちゃんは。まるでボクが、普段だらしないみたいじゃないか」

「フン、では部屋を片付けてもらおう。抗議はその後で受け付けてやるぞ」


 ぴゅーぴゅーと口笛を吹いた、珀さん。抗議は、ないみたい。

 僕たちは、校舎へ歩を進めた。

 そよ風が通り抜けた凪模様。


「久能くん、笑顔がこぼれてますよ? 何か良いことでもありましたか?」


 堀田さんが首を傾げた。


「あー、うん。ちょっと新発見があって」

「ほう? 聞くとしよう」


 五十嵐さんが振り向いた。


「愉快な小話を期待してるよん」


 珀さんが嘯いた。


「身構えるほどじゃないけど……朝、四人で登校するのってこれが初めだった」


 今までどれだけ足並みが揃わなかったことだろう。不徳を致しました。


「堀田さん、珀さん、五十嵐さん。可愛い女子たちと同じ目標を志すなんて、こんなに嬉しいことはないからね――」


 パートナー3人の表情を眺めると、僕はもう眠気が吹き飛んでいた。

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万能AIのコンカツマッチング 金魚鉢 @kingyobachi

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