王子は姫になったけど国王を目指します

Rod-ルーズ

第1話 はじまりまーす

「気分はどう?お姉さま?」


クスクスと笑みを浮かべた表情を手で隠しながら俺のことを眺めてくる

もし、男であれば怒りの表情で少しは彼女のことを注意できるのだが今ではもうその技を行使できない。

双子の姉妹の中で、よく兄のことをいたずらする彼女のことは同性になったことで頻度が増えた気がする。


「それにしてもどうして女の子になっちゃったの?私、それが本当に不思議でしょうがないんですけど」


「俺だって聞きたいぐらいだよ。あぁ~~も~~う!!」


部屋の中で甲高い声が反響する。フィリスタ王国の第二王子であるウィルマ・シャルロッツはある日、夢から醒めたあと自分の性別が反転していたのだった。




俺は元々、この王国で王位継承権第2位の王子であった。長男はいたが次男として国王である父親の政策を裏から支えており部下からも国民からも分け隔てなく接していた。

自分の好感度上げの為にやっていたわけじゃない。自分にとってそれが好きだったからやっていたのだ。鍛錬だって欠かさなかったし、普段の勉強だって手を抜かなかった。だからこそ次の国王は俺のはずだった。それは誰しもが疑わなかったし、親父もその方向で考えていた。だが、それはある日を境にその話は無くなっていくのである。


それは今でも鮮明に言憶えている今朝方のことだった。

普段と同じように朝起きて顔を洗い、城内にある修練所で汗を流そうを起き上がったのだがどうにも体が重かった。自分の着ている衣服に関してもなぜか不思議とサイズが大きい、これは自分の体に合ったもののはずなのにどうしてか袖も裾もすっぽりと包まれてしまっている。


「・・・夢でも見ているのか?」


引きずるような形であったが何とか倒れないように姿見の前まで向かうことができた。

鏡に映った姿を寝ぼけまなこで凝視する。そこには180を超える俺の背丈も筋肉質で女性から声を掛けられるような体格もなかった。そこには自分の双子の妹たちよりも少し背の高い女性が立っていた。

腰まで伸びた寝ぐせのある髪、女性らしい凹凸したシルエット。胸のふくらみは妹たちよりも大きいだろうか。先程から甲冑や式典などで感じていた重みとは違った肩こりが酷い。そして、ただの着崩れた寝巻きなはずなのに何故か色っぽい雰囲気を醸し出している女性に俺は見とれていたのだった。


「は?え?はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


まだ日が完全に登り切っていない朝、俺の叫び声のみが響き渡ったのは言うまでもなかった。



「最初は何事かと思って飛び出してきたけど、まさか部屋を開けたら同じ髪色をした女がいるなんて思いもしなかったわ」


最初に俺の部屋に訪れたのは、双子姉妹の姉の方である、レイヤ・シャルロッツであった。「ボブカットの勝ち気姫」と言われ王女とは言えない行動を起こして、たびたび問題となっており父親及び頭を悩ませている種ではあったが、その人当たりの良さからか人望はある。そんな彼女が普段ならまだ寝ているこの時間帯に足早に部屋のドアを開けてきたのだ。


「ホントびっきりした。遂にウィルマ兄様が街の女を部屋に連れ込んで一発ヤッた、と思ったのに」


「それを真っ先に考えるんじゃない。俺だってまだ頭の整理が追い付いていないんだ・・・」


それからと言ったら朝からとんでもなく大変だった。

親父もやってきて息子がいないと分かったら真っ先に俺を捉えさせてきたのだ。それはそうだ、息子のいる部屋でわけも分からない女が息子の寝間着を着て、もう片方の姿がいないのだから。取り押さえられた俺は刃を向けられて下手な言い訳もつけない状態。生と死の綱渡り状態なのだ、俺は知っている限りのことを話してやっと誤解を解けたのだった。


「セレンも言っていたけどやっぱり信じられないって。まぁ、自分の好きな兄が翌日、姉になっているのだもの」


「それに関してはどうすることもできないんだよな~、また甘い物で機嫌を直すことは無理だろうか」


「ん~、それも難しいんじゃない?」


朝の取り調べで食べそこなった朝食を食べつつ今後のことを想像する。民のみんなにはどう説明をすればいいのだろうか

王位継承権でもっとも王子に相応しいなんて言われていた男が、突然女になりましたなんて王国の権威にもぐらつきが出るだろう。

嘘でもいうか?いや、それでもすぐにばれる。なんだったら王国が噓をついたとなって真っ先に支持率が下がるだろう。


「どうしたもんか、このまま王女として暮らしていくのだろうか」


「まぁ、それもいいんじゃない?王女も王女で大変だし。国の生末はエヴァンス兄様に任せておけばいいのよ」


エヴァンス。シャルロッツ家の長男であり現在は国を離れており、他国で国政を勉強している身だ。

確かにアイツに任せておけば何とかやっていけるだろう。けれど…何故だか良いビジョンが思いつかないのだ。


「もしかして王様でも目指すの?あれっていままで男性しか即位してないよ?女性がなんて・・・」


「だったら俺がなってやる…せっかくこんな身になったんだからな」


こうして姫となった自分であったが王様を目指していくことになった。



































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