第7話 戦後の世界

例えば世界最終戦争が起きたとする。

その時『i』は健在であろうか?

多分、使われなくなった。本屋の様な存在になるだろう。

売れ残った紙媒体の本だ。

「ピピピーー」

うん?

アラームが鳴っている。

「きあ!起きなさい!」

「もう、少し……」

そう、浅い夢を見た。世界が簡単に滅んでいくのだ。

わたしは一人になり、原付に乗って世界を旅するのであった。

滅びた世界、生き残った人々を見に行くのだ。

そこは今の世界と違ったモノであった。

地下シェルターに金塊に埋もれて死んだ大金持ち。

彼にとって世界は金塊が全てだったのであろう。

皮肉な場所は多くあった。

そして、わたしの浅い夢は終わりを告げる。

「起きたよ」

「ホント、毎日、毎日」

「ありがとう、感謝しているよ」

「もう」

わたしは日常を始める。

「あ、香苗ちゃんから着信が来ていた」

朝だし、謝りのメッセージを送る。


いつもの様に団地の階段を駆け下りて駐輪場に向かう。

そして、自転車で学校にカットばしていく。

最近は教室に一番で入るのを目指している。

一季君と二人で密会する為だ。

教室に着くと、そーと、入口を開ける。

ダメか二番目だ。

クラス一の真面目な角田君が予習をしている。

「きあ、おはよう」

後ろから一季君が声をかけてくる。

「おぉ、おはよう」

やや、驚き気味に挨拶する。

「このまま、どっか行こうよ」

わたしは一季君と二人きりになりたかった。

勿論、反対された。

わたしは今朝、見た世界最終戦争の後。ただ、真実をこの目で見る原付での旅の事を思い出していた。

世界の終わりが近くても、わたしの言葉は足りず。

授業をふける理由にはならなかった。

「けち……」

わたしはそう呟くと席に着く。

それから、スマホを取り出して『i』のアプリを起動する。

画面に気怠そうなペンギンがこちらを見ている。

「賽の目を振ってくれないかな?」

わたしの問に画面に『零』の文字が現れる。

ここに居ろとの事らしい。

その後は渋々授業を受ける事にした。


***


うん……?

目が覚めると小さな小屋の中であった。

顔の横にある拳銃を確認する。

『カシャ』

よし、銃弾も入っている、

外に出ると荒地が広がっている。

そう、世界は滅んだのだ。

何故かスマホは充電されて電池切れになる事はなかった。

第七世代のAI『i』は何処かに行ってしまった。

おそらく、何時か必要になる時の為にこのスマホを生かしておくのだろう。

あの世界が滅んだ戦争はわたしが高校を卒業して直ぐに始まった。

核兵器は簡単に世界を滅ぼした。

AI『i』は日本の女子高生のスマホが一番安全だと思ったのかもしれない。

さて、わたしは原付を確認すると……。

「あちゃーガソリンが少ない、次の街まで行けるかな?」

地図を取り出して目的地を探す。

「お財布も厳しい、次の街で少し稼いでおくか」

わたしの稼ぎは賞金首に要人の護衛、痴漢を捕まえてゆすった事もある。

この終わった世界はしがらみが無く、慣れれば楽しいのである。

わたしはハムサンドを取り出して食べ始める。

そして、原付にまたがり出発する。

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賽の目で決めるAIの恋占 霜花 桔梗 @myosotis2

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