第6話 ゲームミュージック

 翌日、駅のロータリー。

 わたしは白のワンピースに大きな麦わら帽子、白い靴であった。

 この姿は避暑地に住んでいる、余命一年の白の少女だ。

 着ていていると本当に死ぬの?と、錯覚するほどだ。

「あれ?きあはその恰好でいいの?」

「はい?」

「俺はトレーナーにジーンズだよ」

 確かに一季君はラフな格好であった。

「きあ、その姿は似合っているよ」

 一季君は半分、首を傾げながら褒めてくれる。

 だよね、この恰好では死を待つ少女だ。

「オーケストラですよね?」

「大丈夫、ゲーム音楽とかラフなコンサートだからね」

 ジャージとの二択で、この恰好だもの、深く考えるのは止そう。

 とにかく、会場に向かおう。行先は駅から十分ほど歩いた所にある。

 途中で白シルクハットの姿の女子がいた。

「×××君のライバルのコスプレだね、アニメミュージックも入っていたから」

 これはジャージで良かったのではと長考する。

「ぐーぐー……ぱぁ!」

 長考途中で寝てしまった。昨日は八時間も寝ているのに気分は徹夜だ。

「うぐ……」

 コンサート終盤の事である。

 わたしは開演前に水気の物を飲み過ぎた。

「トイレに行って来るね」

「きあ、三度目だよ」

 一季君が呆れている。言いたいことはわかるが近いモノは近い。

 ここは四度目のトイレは我慢しよう。

 三度目から帰ってくると。

 逆に、かなり意識をしてしまう。

「四度目はなし、四度目はなし……」

 キターーーー

 四度目の尿意である。

 オーケストラの演奏もフィナーレが近い。

 ここは我慢だ。こんなことならお茶を二本も飲むのを止めるべきであった。

 ……。

 演奏が終わると紙のアンケート用紙が回って来る。

『わたしはトイレに行きたいの!!!』

 アンケート用紙にそう書くとトイレに駆け込む。

 それから……。ロビーに一季君が気まずそうに立っている。

『三歩前に』賽の目の占いだ。

 わたしは三歩前に進む。

 このコンサートのポスターが貼ってある。

 そうか、日本人は雰囲気を大事にする事を思い出す。

 Ⅲの『そして伝説へ』をスマホで再生しながら一季君の前に立つ。

「流石、きあだ、調べてこのコンサートに来てくれたのだね」

 ふう~助かった。

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