第7話 思いがけない別れ
K先生との逢瀬を楽しみつつ、勉学にも励んでいた私。
成績は上がらず下がらずキープ。
ところが、耳を疑うような情報が耳に入ってきた。
遠くの支店に先生が転勤になるらしい。
車で言えば3時間くらいのところ。
でも、中学生の私にはとても遠い距離だ。
あんなに厳しい母を説き伏せられるわけもない。
先生の転勤先には、随一の難関校がある。
あそこに入れれば、先生に会えるかもしれない。
私は、より一層勉強を頑張った。
内申点も、しっかり意識した。
学校では、模範的な生徒、先生の前では、まるでヘソを出したネコのようだった。
先生が転勤して、何かがポカンと抜け落ちたような感覚になっていた。
事務所に行っても、先生は、いない。
先生の残り香も、移り香もない。
それでも、私は勉強するしかなかった。
先生に会いたいから。
先生のそばに行くために。その高校に入りたかった。
そんなこんなで、高3の冬になった。
合格発表の日だ。
皆が受験票を持って、わらわらと集まってくる。
私もその中のひとりだ。
私の番号、、、あるかな、、、
その間も、先生のことばかり考えていた。
そして、私の番号は見事にあったのだ。
私は、春から先生のそばで勉強ができる。
こんなに嬉しいことはあるだろうか。
大好きな人の側で勉学に励めるなんて。
その時は、喜びでいっぱいだった。
ココロが、まさにピンク色に染まっていた。
しかし、、、、
「そんな遠くの高校、お金かかるに決まってるでしょ!近くの高校にしなさい!」
「大した夢もないくせに」
「お前なんてそこらへんの高校で十分だ」
「うちはお金ないんだから」
そう、母に言われて、私のピンク色に染まった心は真っ黒に染まっていった。
私は母から虐待を受けていたので、どうしても逆らえない部分がある。
それでも、それでもと懇願した。
しまいには、蹴っ飛ばされた。
私の恋心は、母に蹴り飛ばされた。
地元の高校に泣く泣く行き、ごく普通の高校生活を送った。
ただ、夢も希望もなかった。なりたいものも、こうなりたいともなかった。
ただ、先生に会いたかった。
メールはできたけど。声が聞きたい、姿が見たい。大好きな私の初恋。あなたが好きです。
高校3年間、無味無臭、楽しいことも特になく、それでもピエロを装って、「楽しそうに」過ごした。
でも、頭の隅にはいつも先生がいた。
メールが来れば、1日ハッピーに過ごせた。
しかし、問題なのは面談だ。将来、何になりたいか。どうしていきたいか。未来の方向性を決めないといけない。
私には夢も希望もなかった。
こうなりたいともなかった。
あの時、私の懇願を蹴飛ばされた時点で、そんなものはとうになくなった。
私はこれから、どうなるのだろう。
あの日から、貴方のトリコ。 ふゆさん @fuyuxo
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