この物語の登場人物には、名前がない。
それなのに幕末という短い時代に、本当にこんな男がいたのではないか――とさえ思わせる、圧倒的な存在感がある。
短編でありはっきりとした物語があるわけではない。
ただ剣戟のみが描かれる本作ではあるが、それ故に登場人物たちは全てを捨てて剣に打ち込んだ人物であることを読者は疑わないだろう。(少なくとも私は)
凄まじい剣技が詳細に書かれることでここまで腕を磨き上げてきた経緯、つまり登場人物の今までの人生が想像されるのである。私はその陰で泣いた女性の姿まで見えた気がした。
…と、ここまで時代小説巻末の「解説」気分で書いてしまいました!
これはこれで完結するのが正しいのかもしれませんが、主人公の今までやこれからも見てみたい作品です! チャンバラサイコー!