第16話 ギルドへの依頼
「ギルドマスター直々のお呼びだてと聞きましたがどのようなご要件ですか?」
俺の素性を知ったところで追放された身だし旨味はないよ?
「ははは、警戒されるのも無理はございません。これまで何の支援も行ってないのに、いきなり掌を返すような態度をとり重ねがさね非礼をお詫びします。今日お越しいただいた件ですが、実はシャルル皇女様から――」
えー……シャルル皇女様絡みじゃ絶対に面倒なやつじゃん。
やっぱり口止めしておけばよかったかな。イタ!いきなり噛みつくなよ。お前は野良犬か!
『魔王ですー。プリティーマオちゃんですー』
ツンツンしやがって……可愛いにもほどがあるな。
『え?』
「え?」
「メモリー様?今の話の中でになにか気になることでもございましたか?」
マオが真顔で照れるからつい声が出ちゃっただろ。
ここで俺まで頬をピンク色に染めようものならギルドマスターに勘違いされそう。
「正直申し上げますと気になることだらけです」
ギルドマスターの話によると、ここエステリオ王国の冒険者ギルドにシャルル皇女自ら依頼があった。ダンジョン救出のお礼も兼ねて本人が連絡してきたらしい。
今回の依頼はメルノア公国からエステリオ王国までの護衛任務らしいがこれは異例なこと。
通常は信頼できる自分の国の騎士団が護衛につくか、お忍びならば自国の冒険者ギルドに依頼するからだ。
「私もそう申し上げたんですが……婚約者であるメモリー様を単独で指名しますと言われまして」
「ぶっ!!」
来客用に用意されていたお茶を盛大に吹き出してしまった。
マオは「やっぱりそうなのね!」とか言いながら髪を引っ張るしお前は俺の嫁か。
おいおい、そこで黙るなよ。
「12歳を迎えてから婚約者じゃありませんよ。家を追い出されましたから。それに俺はソロの冒険者です。ご存知ですよね?護衛任務の適任者とは思えません」
「依頼者の安全確保のためにメモリー様のことを失礼ながらいろいろ詳しく調べさせました。もちろん緊急クエストの功労者なのも存じてます。皇女様には「秘密ですよ」と念を押されましたが」
他人に言った時点で秘密じゃなくなってるから!
あの天然お姫様は……
「アンナの方からもダンジョンボス討伐の報告を受けてますのでソロ活動でも支障はないと私どもは思っております」
アンナまで!?二人とも俺の能力は言ってないようだけど勘弁してくれ。超能力が覚醒したいま、あまり目立ちたくないんだって。
「シャルル皇女様はエステリオ王国にどのような用事で来られるのですか?」
「そこまでの個人情報は私共も存じておりません」
俺の個人情報は筒抜けだけどな!
俺も他人の個人情報を超能力で覗き放題だし人のことは言えないか。
「なにか理由があってメモリー様は功績を隠されてるご様子。ですのでダンジョンのクエスト達成報酬ですが冒険者ギルドとしましてはこちらをご用意させていただきました」
こ、これは……
「もちろんこれは大変貴重なものになりますので前回分と今回無事にクエスト達成をした時の報酬になります」
ガチャ!
「失礼しま――」
「やります!やらせてください!」
「は?」
「は?」
……アンナ?
「違うって!あっちはやるけどこっちはやらないって!」
「やっぱり!」
うん。自分で言ってても意味わからん。アンナが誤解するのはわかるけどマオまで驚いたふりをするんじゃねー!全部聞いてただろ。
* *
「誤解が解けて良かったね」
「誤解された俺の方がショックだ。誰があんなオッサンなんかと。それよりメモリーソードも戻ったことだしさっさと依頼を終わらせよう」
剣はラクスがアランのもとへ持っていった。アランもまた俺の剣だと聞いたうえで握ったはずだ。他のメンバーも黙認したのだろう。だから俺はある罰を与えてやった。俺だけでなくこれ以上他の冒険者にも迷惑がかからないように――
「その剣はやっぱり普通じゃないわね。ゾンビが全部消えてからあなたのもとへ戻ってきたんでしょ?」
「ああ、それはあらかじめ千里眼でメモリーソードの位置を把握しておいたんだ。魔力の吸収が終わったら遠隔操作で念動力、瞬間移動の順に超能力を使って俺のもとに戻ってきたんだよ。わかるか?」
「ぜーんぜんわーかりーませーん」
だろうな。要領を得たおかげなのか完全記憶能力の相乗効果なのかは分からないが、いろいろと応用が効くようになってきた。そういえばメモリーソードが戻ってきた時に火事の炎で熱くなってて少し火傷をしたけどマオが魔法で治してくれたから通知音が鳴ってたな。
「魔法が前よりも使えるようになってないか?」
「その剣がたくさん魔力を吸収したら私の魔力を少し戻してくれたみたい。それより今度はどんな能力を手に入れたの?」
「ちょっと待っててくれ」
【 メモリー 】
【 昇級クエスト実行中 】
【 職業 : 超能力者 】
【 ボーナススキル : 完全記憶能力 】
【 ユニークスキル : 千里眼 読心術 念動力(改) 瞬間移動 サイコメトリー ヒーリング能力 】
念動力が統合されていた。ダンジョンで出会った魔物たちが、多くの魔法を俺に使った副産物なのは間違いない。遠隔魔法を受けたおかげで念動力が進化したのだろう。
「ヒーリングって魔法じゃないの?」
「それは回復魔法のヒールだろ。これはれっきとした超能力だ」
この世界の人たちは魔力を使って魔法術式で治療するようだが、俺の体は前世のまんま。人間は本来様々な潜在能力を持っている。
その能力を10%ほどしか使われていないと言われているが、身近なところではどこかにぶつけた際、母親が手で優しく撫でた時などに感じられる。
不思議と痛みが和らぐ現象がヒーリング能力なのだ。俺の完全記憶能力も脳が人より発達した結果と言える。
「実際に自分の怪我を治したり誰かを治療しなきゃ効果がどれくらいあるのかわからないけどな」
「ふーん。あなた達人間てすごいのね」
俺からすればマオの方がよっぽどすごい。
魔族という別の人種にも拘わらず、素直に他の種族を褒めるなんてそうそうできるものじゃない。俺の住んでた地球だって生まれた国が違うだけでいろいろ争ってたくらいだ。
「それでは任務開始といくか。マオ、俺に掴まれ」
「了解!準備万端よ!」
俺とマオはメルノア公国に
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