ハロウィンの幽霊

神木駿

街に潜むもの

 今日はハロウィン!


 街は仮装した人たちで溢れてる。


 浮かれた人たちが街を練り歩く。


 かくいう私もその中の一人だ。


 毎年恒例の行事になっていて私はとても楽しみにしている。


 今年は幽霊の仮装をする。


 なにせイベントごとが重なって金が無かったのだ。


 幽霊ならば布一枚に少しだけ絵を塗って、目を出す穴を開ければいいだけだ。


 私の仮装はその日のうちに完成し、街へと繰り出した。


 街は活気が溢れている。


 ドラキュラやフランケンシュタイン。


 ジャック・オ・ランタンやガイコツの仮装をしている人たちがたくさんいる。


 中にはアニメのキャラクターの仮装をしている人もいた。


 でも何でもいいんだ。イベントごとは楽しくやらなくちゃ!


 ハロウィンの起源は収穫祭だとか幽霊に紛れるためだとか言われてるけど、みんなが楽しければいい。


 私はそう思っていた。


 私が街を歩いていると私と同じ仮装をした人を見かけた。


 人がギュウギュウで上半身しか見えてなかったが半透明の布を使っていて、まさしく幽霊そのものだった。


 うわぁ、凄いな。確かにああいう布を使えばもっと幽霊感が増すよな。


 私はその人を見失わないように人波を掻き分けながら進む。


 来年のためにその布をどこで買ったのか聞きたかったのだ。


 血糊メイクをしている人が多くて辺りの人は体のあちこちに赤いものがついている。


 私が半透明の布を追っていると少しだけ人が少なくなった。


 チャンス!


 私はその人の肩辺りににポンと手を置いた。


 はずだった……


 私の手はその布をすり抜け空を切った。


 え?


 私は目を疑った。だが私の距離感があっていないだけだったのかも知れない。


 私はもう一度手を肩のあたりに持っていく。


 その時私は気づいた。


 半透明の布ならば中の人が透けて見えるはず。


 なのにその布は前の建物がそのまま見える。


 私はとんでもないものを触ろうとしていた。


 そのまま振り返って帰ろうとしたとき背後から楽しげな音楽が聞こえてくる。


 やった!


 私はそう思った。人が後ろにいる。それならもう安心だ。


 私は音楽が鳴り響く人混みに歩みを進めた。


 今日のことを友人にどう話そうかなんて考えていたらあることに気が付いた。


 あれ、おかしいな。


 辺りがやけに暗い。それに街というより村の様な風景が広がっている。


 その中を歩く人々は仮装をしている。


 それは数分前と変わらない。


「ねぇ、君珍しい格好してるね」


 私は目の前にいたカボチャに声をかけられた。


 ハロウィンで幽霊なんてそんな珍しいかと思っていると、カボチャは話を続けた。


「だって幽霊なのに透けてないなんて珍しいよね」


 その言葉で私は今どこにいるのかを悟った。


 皆さんも気をつけて下さい。


 今日はハロウィン……


 あの世とこの世が繋がる日。


 帰る場所を間違えないように……

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ハロウィンの幽霊 神木駿 @kamikishun05

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