第5話苦情

「あぁ〜疲れたぁ〜!」

「……そうか。俺には無理だよ」

前方の席の椅子に腰掛け、背凭れに両腕をだらんと置いた体勢でため息をつく友人A。

そんな彼に、うわの空を装った相槌をうち、断りを入れる俺。

「なんで無理なんだよッ!元凶はカッキーなんだからどうにかしろ!俺をやつのやつ当たりから解放させろって!」

周囲にいた談笑で夢中な生徒らが、彼の荒げた声のおかげで俺らに視線を向けてきた。

「山下くんだってわかってるはずだよ、長谷部さんの性格たちをさ。謝ってもああなんだから。それに……」

「はんっ!友人を見捨て、己を肯定するとは。サイテーだよ、カッキー。それに、何だよ?」

言葉セリフの続きを促す彼。

「いや……もう良い。サイテーなやつに執着するキミもキミだね」

「うわぁー、こいつってやつは捻くれてるわ〜!」

大袈裟に引いたリアクションを取る彼。

「ごめん……今のは。ただ——」

「良いよ、言わなくて。長谷部は、『理由わけも分からずに謝んないでよね』なんていつもの言ってんだろ。俺だって精神ここ頑丈タフってんじゃねぇから早めに収束させろよ、カッキー」

「ほんと、ごめん。ヒントも貰えなくて……」

「鈍感だかんなぁ〜カッキーは」

山下樹は椅子の背もたれを掴みながら、教室の天井を仰ぎながら呆れ混じりに息を漏らす。

「今日の放課後にあいつをデートに誘え。多分、なんやかんやで誘いに乗る。食い下がるなよ、絶対。それが成功クリアすりゃ、なんとかなる」

彼のアドバイスを聞いて、首肯した俺だった。

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誘われるまでもなく、キミの魅惑に酔っている 闇野ゆかい @kouyann

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