第15話 日本史研究室のお茶会(8)
「で、
「
「ちゃん」がつくととりあえず現代の杏樹のほうだな、と思って、答える。
「はい」
「杏樹ちゃんが読んだお話で、その
「はい?」
思い出してみるが、思い出せない。
「なんか、その
「人買いとか奴隷扱いとかを禁止された、っていうのはあるよね」
先生が言う。
もともとわからなかったけど。
「でも、奴隷にしていた人たちを解放して給料を払うようになったら、かえって経済的に繁栄して、その地方の支配者の山椒大夫はもっとおカネ持ちになった、って結末なのよ。
「えーっ」
それは不条理だと思う。
さんざん悪いことをして儲けて、それを悪いと指摘されて、やめて、やめた結果、さらに儲けて自分だけハッピーエンドになるなんて。
「ところがね。そのオリジナルのほうは、報復で処刑されるの。それも自分が安寿にやった以上に残酷なやり方で」
「えーっ!」
それはもっといやだ。
いや。
自分が殺されたお姫様だとする。殺されたのか、自分で死んだのか、わからないけど。
どっちがいいだろう?
自分を殺したやつが、前よりいっそう繁栄するのと、自分より残酷に殺されるのと。
やっぱり、どっちもいやだよなぁ。
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