第7話 お茶会が始まる
「今日は二年生はお客さんだから、お手伝いさせるわけにはいかないわ」
と手伝わせてもらえなかった。お客さんなのか主人公なのか、どっちにしても
それで泉仁子と向かい合わせに座る。
泉仁子は、持って来てもらった本に手を伸ばそうとして、三善さんにすかさず
「ああ、いまさわっちゃだめよ。手がほこりだらけになるから」
と言われた。
それでずっと居心地悪そうにきょろきょろしていた。杏樹と目が合ったので杏樹が笑うと泉仁子も笑顔を返したけれど、そのまままた顔を伏せてしまった。
気まずいと思わないといけないのだろうか。でも、杏樹の気もちは「かわいいっ!」だった。
三善さんが杏樹に紅茶を出してくれた。泉仁子のとお揃いの和風のティーカップだ。湯気といっしょに紅茶の香りが広がる。華やかだ。紅茶に香りがあると言われれば、あるんだろうなと思っていたけれど、こんなに豊かな香りがあるとは思わなかった。三善さんが
「ミルクとお砂糖、使う?」
と言う。いつもならたっぷりお砂糖を入れてミルクも入れるのだけど、こんないいお茶に何かを入れるのはもったいないと思って
「いいえっ」
と小さく断った。首をすくめて「いいえっ」と言うと、それが向かい側の泉仁子に似ているようで、くすぐったい。
三善さんは、泉仁子のとお揃いの小さいお皿も出してくれて、白い箸でアーモンドのカップケーキを載せてくれた。太いほうに細かい細工のある、高級そうな、少なくとも値段が高そうな箸だった。空いていた泉仁子のお皿にも同じようにお菓子を載せる。
三善さんと先生も自分のカップに紅茶を入れてきた。二人ともたっぷりミルクを入れている。
なんだ、これだったら自分もミルクを入れてもらえばよかったと杏樹は思う。
大藤先生が杏樹と同じ側、三善さんが仁子の側の席に着く。
「さ、今年は四人でお茶会かしらね」
と大藤先生が言ってお茶会が始まった。
いや、お茶会に来たんじゃないんだけど……。
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