第2話 すべての図形は直角三角形に分解される

みなさんの目の前にはおそらくいろんなものが置いてあることでしょう。机、コップ、ペン、紙…いま私の前にはこんなものが置いてあります。これらのものを金づちで木っ端みじんに粉々に砕き続けたら、きっと小さな砂みたいなかけらになりますよね。違いますかね?なんかそんな話を聞いたら一度試してみたくなりますよね。おそらく多くの昔の人もそんなことを考えてたんだと思います。

じゃあ、そうした砂みたいなかけらをさらにどんどん、どんどん砕いていくと、どれぐらいにまで小さくすることができるのでしょうか?ほんの小さなかけらをさらに砕いて、目に見えないような小さなかけらをさらに砕いて…いくらでも小さなかけらにすることができるのでしょうか?

そんな疑問に多くの人たちが悩んだことで、今の「化学」が生まれました。今から数百年前のことです。ヨーロッパで色々な「仮説」を立てて立証していくことで、その仮説が正しいか正しくないかを吟味していきました。その結果、どんな物質も「分子」にまで砕くことができるということが、わかってきました。きっと高校生の頃に「化学」を勉強した人ならドルトンとかラボアジエとか、そういう人たちの名前を憶えてらっしゃるかもしれません。

さらにその「分子」は「元素」の組み合わせで作られていることもわかってきました。「元素」とはそういう意味では目の前に置いてあるいろんな「モノ」を形作る最小単位だということができるのです。この元素のことを研究することで、いろいろな物質の性質を知ることができ、いろいろな化学反応を理解することができるようになるのです。画期的なことですよね。

ですから、化学を勉強する基本は、元素をよく理解することです。つまり、

●元素を覚えて、

●どの元素がどんなふうに結合して分子ができるのかを理解する、

ということになるわけです。基本をしっかり理解するから、複雑な分子構造や化学反応を理解できます。逆に言うと、元素の種類や性質をすっ飛ばして化学を勉強しようとしても、なかなかうまく理解できないというわけです。


さて、前置きがかなり長くなってしまいましたが、なぜ三角関数の話をする前に「化学」の基本の話をここでしたかというと、実は全く同じ話が数学の図形問題に当てはめることができるからなのです。例えば図のような七角形があるとしましょう。この七角形の面積を求めたいときに、どのようにするといいでしょうか?


(ゆがんだ七角形の図)


実は方法はいろいろあるのですが、複雑な図形というのも、先ほどと同じように小さな図形に分解して考えるといいですね。おそらく多くの人は下のようにいくつかの頂点を結んで、三角形に分解することを思いつかれたのではないでしょうか。


(七角形を5つの三角形に分解した図)


実はどんな図形でも、三角形に分割することはそんなに難しいことではありません。では分割された三角形の面積はどのように計算すればいいでしょう?


三角形の面積の公式…覚えてらっしゃいますか?


三角形の面積=(底辺)×(高さ)÷2


です。ある頂点から対辺に垂線をおろします。このことで、三角形は2つの直角三角形に分割することになります。対辺のことを(底辺)、垂線の頂点から交わる点(この点を「垂線の足」といいます)までを(高さ)というのでした。


(三角形の底辺と高さの図)


ですから、分割した三角形の底辺と高さをそれぞれ定規で長さを計測すれば、面積が計算できるわけです。さきほどの七角形で考えてみると、


(5つの三角形それぞれの面積を計算する図)


という感じで計算できますね。


要するに三角形にまで分割し、さらにそれらすべての三角形に(高さ)を引くことで、基本的にどんな図形でも面積を計算することができるというわけです。もっと短く言うと、


格言:すべての図形は直角三角形に分割できる


ということなのです。いかに直角三角形が重要かということはご理解いただけましたでしょうか。

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三角関数を語る @kagichan

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