北風くんと太陽くんとヘドロくん

平和将軍

北風くんと太陽くんとヘドロくん

〈自然界〉


ここは自然が意思を持つ世界。

青々と生い茂る草木はしゃべり、雲はふわふわとうたた寝をしていました。

空は透き通るような青色で、蝉の鳴き声が高鳴り、熱量を感じる世界……。


そんな世界の一角で、上空から見下ろすものと地面に這いつくばるものが応対をしていました……。


「そんな下でジメジメしてて何がいいの?」

北風くんは気持ちよさそうに風を吹かし、下を見やり笑いながら言いました。


「そうそう、こっちに早く来いって…あっできないか…泥だもんなぁ!」

それに連なるように太陽くんは続けます。


「……」


北風くんと太陽くんは、泥で作られたヘドロくんをバカにしてました。


「なんか言ってこいよ。…ったく、ジメジメしてて気持ち悪いな。……お前さ…そんな下の掃き溜めによくいれるよな。というかさ…味噌っカスのお前が、なんでグループがある場所にいれるんだ?」


「おいおい、やめてやれって。味噌っカスだからそこにいるんだよ。みんなから嫌がられてるから世界の隅っこに居座って…似た者同士がいるところへ集まって、未だネチネチ這いつくばって存在してるんだ。…そんな奴らが掃き溜めでも頑張ってんだ…微笑ましいじゃないか」


「あっそうか……でもなぁ。お前らがどんなにネチネチ這いつくばって何しようとも…お前らが俺たちより上になることなんてないんだよ!」


「あっははっははは!」


「……」


悔しくて悔しくて…なんとかして見返してやりたいと…ヘドロくんは常に思い悩み…心の底で泣いていました。



そんな世界で

ある日、北風くんと太陽くん、どちらのほうが上なのか…という言い争いをしました。


そして、北風くんと太陽くんが論争をしている最中に…それを横目に歩く女性が現れました。


それに気づいた北風くんと太陽くん。

北風くんは太陽くんに提案します。

「あの女の上着を脱がせたほうが勝ちな」

「ああ、それいいな。望むところだ!」


二人はその女の子で勝負をすることにしました。


それを地面から眺めているヘドロくん。

「勝負…あの勝負に勝てば…俺…二人より上になれるのか…」




先行は北風くんからです。

北風くんは女の子の上着を脱がせようと、女の子に向かって力いっぱい風を吹きかけます。

しかし、女の子は寒さに震えながら上着をよりいっそう強く押さえました。

強く強く攻めましたが…

結局、北風くんは上着を脱がすことができませんでした。



後行の太陽くんは、ギラギラと女の子を照らしはじめます。

女の子は太陽に照らされると…呟きました。

「…嫌だな。日差しが強くなってきた…汗もかいちゃう…」


そんな様子に太陽くんは勝ち誇ります


そして次の瞬間に…





日焼けを気にした女の子は、アームカバーを着用しました。

「日に焼けたくないけど…日焼け止めでベタベタするの嫌なのよね…」


それを聞いた北風くんは笑いました。

「なんだよお前!脱がせる所か着させてんじゃん!」

「ぐぬぬ」

北風くんと太陽くんが決着をつけられず談笑する中……女の子がいる所にヘドロくんが現れました。

「ん?ヘドロ…?」

「何やってんだ…あいつ」


ヘドロくんは女の子に近づいていきます。


「おいおい、あんなんじゃ嫌がられて…」

せせら笑う北風くんと太陽くん。



そして…


ヘドロくんは女の子の服に泥を吹きかけました。


「!?」

「えっ」


驚く北風くんと太陽くん


それに気づいた女の子は上着を脱ぎ出します。

そして、急いで水場へ向かい上着を洗い…表情を曇らせました。


「……俺…勝った…?…勝った!あいつらの勝負で…勝ったんだ!」


自らの行動の結果を噛み締めて…ヘドロくんはゆっくりと高揚して…笑みをこぼしていきました。


そんなヘドロくんと対照的に女の子は涙を流します。

「私の大切にしていた…好きだった服が汚れた……」


その様子を確認した太陽くんと北風くんはヘドロくんに憤怒し……ヘドロくんの元へ詰め寄りました。


しかし、ヘドロくんは悦に浸る様子です。


「…おいっ!」

「くっ…はっはは!なに?…何怒っちゃてんの?」

「お、お前!何やって…!」

「どうした?悔しいの?負け惜しみか?」


責めてきた北風くんと太陽くんに対して、

ふんぞり返るヘドロくん


「そういうことじゃない!あの子…泣いてんだろ」

太陽くんはヘドロくんを叱責します。

そんな太陽くんに対してヘドロくんは……


「…それがどうした?」

「それが…?」

「そうだろ?お前らは他人が泣いてたって関係ないだろ。俺にもやってんだから…それと同じだよ」

「は?何言ってんだお前」


「お前らが俺にやってることをなんで俺がやっちゃいけないんだ?

だいたい、これはお前らが始めた勝負-ゲーム-だろ?認めろ…お前らは俺に負けたんだよ!」

「相手は女だぞ!やって良いことと悪いことがあるだろ!!」


「そんな基準、誰が決めた?それにお前らが女を対象にしてんだろうが!

勝負-ゲーム-に使ってる時点で同罪だ!」


「遊びだからって女を傷つけて良いわけないだろ!」


「はぁ…なんだよ…見苦しい…そんなんで逃げるな!」


「逃げてねぇよ!女が泣いてんのに、お前…!」


「うるせぇ!外野がどうなっていようが、この勝負-ゲーム-に関係ねぇだろ!

いい加減に負けを認めろ!女の服も脱がせられないようなカスが…負け組が、ほざくんじゃねぇよ…!俺を見下して指図すんじゃねぇっ!!」


「…なっ!」


「いつもバカにしやがって…っ!負け組が高い所から演説垂れてんじゃねぇ!!とっととその汚ねぇツラを地面に押しつけて、俺が上に立てないという間違いを謝罪しろ!!」


「…てめぇ!!」

「…待て!…これ以上の会話に意味はない…」


北風くんと太陽くんは互いに目配せをします。

互いに頷き、理解し合いました。

(協力をしてヘドロを消し去ろう)


太陽くんは強烈な熱をヘドロくんに浴びせて乾燥させ水分を蒸発させました。

次に北風くんは残った砂を吹き飛ばしました。


あっという間に消えてなくなったヘドロくん。


しかし、女の子は涙は止まりません…。


そこで北風くんと太陽くんは、協力して女の子の服を乾かして綺麗にしてあげようと思いました。


太陽くんは服を乾かし、

北風くんは風を吹いて服の埃を吹き飛ばしました。


洋服は綺麗になり、女の子はまた笑顔になりましたとさ。


めでたしめでたし





あとがき



……本当にめでたいのか?


勝つことや上になることは正しいことなのだろうか?

勝負をはじめたのは誰?


相手の基準で勝負するのは、幸せなのか?


勝負をして、見知らぬ誰かが傷つくことを考えてないんじゃないか?


そして、競争になりヘドロが動いた原因は太陽くんと北風くんだったりするのでは?


もし、ヘドロくんが「僕は肥料として価値を提供できる」と考えて

北風くんや太陽くんと別のものと関わっていたら?


作り終わってから上記の問いかけをしてみたくなりました。


僕が読者なら風刺作品として考えて、上記の懸念しますね。



「善悪や優劣…勝ち負けじゃない。これは問いかけだ!そう、俺は今こそ自分を知った!

世界よ!皆の者よ!…思考をして、しかし、行動することをやめないでくれ!」

(by仮面の男ゼロ)



(※どうでもいいけど「肥料としての価値」は、個人的にモヤっとする。信者と書いて儲ける的なニュアンス。意地が悪い受け取り方だね。)





この作品を深読みするとある問題につながると考えられる。


その裏付けに対する研究の話


男性にストレスを与える(追い詰める)と

性欲が上がるという研究結果がある。

生物学的な視点で言えば、その研究結果は

生存本能から仮説は立てられる。

(※子孫を多く残そうという本能があるので、自身の存在が危うくなれば種をばら撒く必要がある)


なので、その視点でみれば懸念は間違いではないと思われる。



PS:女性は安心や良好な状態の時に性欲が上がるとされている。

(※性欲は出産につながる感情のため)

疲れている時は休んだ方が良いとされている。



もし仮に、もっと深読みをされている方がいる場合。


風刺作品として印象操作があるので記述をしておきます。


強制性交について。

強制性交についての古いデータで、

見ず知らずの他人よりも知人や友人の割合が高かったとされています。

そして、犯行に及んだ人間は恋人、配偶者を持つ人だったことが多いとされていました。


なので孤立してヘイトを溜めてる人間が必ず女性へ矛先を向ける話ではない。


ということだけは記述しておきます。


それと作品としては、そのような表現をしますが、

個人的に女性を弱者として扱うのは好きじゃありません。奴ら強いです。


以上です。ありがとうございました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

北風くんと太陽くんとヘドロくん 平和将軍 @Heiwa_syougun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ