第4話 人生を比べ合う

 家に帰宅した。と、言ってもまだ昼頃だ。リビングでテレビでも見て暇つぶしするか。

「ただいま。」と言いながら玄関のドアを開ける。

 まぁ、親父は会社に行っていて家には誰もいないがな。

 「ただいま」なんて言葉、ついさっきまで忘れていたのに、勝手に口から出たのだ。帰ったら母がいて、「遊びに行ってもいいけど宿題やりなよー。」など、優しい言葉を聞く。幸せだった。

ただ、

 =そんなことを言いながら、他の男のことを考えていた=

 そんなことを想像すると吐きそうになる。考えるのをやめよう。

 

 さぁ、何を見るとするか。1チャンネルから見ていくか。

 1,2,3,4,5,6,7面白いものが全然ないな。どれもニュースばっかり。外に出る人あてのものは僕にとっては全くの無意味だ。テレビはやめよう。

「ピッ」

 あ、間違えて8チャンネルのボタンを間違えて押してしまった。

「ライダーキック!!!!!」※テレビの音声

 [おっ、仮面ライダーじゃん、懐かしいな。]

 子供の頃よく見ていた、仮面ライダー。今でも鮮明に覚えている。しかし、今この歳になっては、見ても何もかっこいいとは思わない。でも、案外面白いものだな。ダサい敵とダサいヒーローがダサいセリフを口にしながら、ダサい攻撃をしているのだ。

 唐突だが、これだけダサい仮面ライダーに、僕は負けている。つまり、それ以上にダサいということだ。

 まぁ、考えなくてもわかると思うが、なんかのアレルギーとか病気でもないのに、日光も浴びれなかったやつが仮面ライダーに勝てるはずもないんだ。

 仮面ライダーは確かに技名や動き自体はダサいが、目的が明確であるのが一番の違いだ。

 ヒーローは悪者を倒し、世界を救うため。悪役はおかしいと思う世界を自分の思うように変えるため。どちらも素晴らしい考えだと思う。

 しかし僕はどうだろう。どんな理由であれ、「学校に行きたくないから」という、1文だけの「言い訳」でカーテンを閉めネットの海を泳いでいるのだ。無論、目的など1ミリも持っていない。

 根本から違うのだ。

 「一つの場所にたどり着くための道を探している」人と、

 「一つの場所すら見つける事ができなかった」人。

 どちらがすごいか。言うまでもない。

 考えすぎて頭がつかれた。少しの間寝ようかな。

 僕はソファーで寝転んで夢の中へと入り込んだ。


 ん?渡部か?

 「おーい、村松ー!」

 「元気してたか?」

 「俺はなぁ、彼女ができたんだぜ?いいだろう?」

 「あぁ、あまりこういう話し嫌いだよよな。すまない。」

 「俺さぁ、いい感じの大学に合格したんだ!」

 大学?あぁそうかもうそんな時期か...

 「お前はどうなんだ?聞かしてくれよぉ」

 僕...僕は....

 

 =何もなかった=


 文字通り何もなかった。渡部と別れたあとの5年間。強いて言うならば、youtubeでチャンネル登録者が5万人を突破した程度だ。

 それも、しょうもない、品もない、おもんないの「ない」3連チャンのゴミみたいなチャンネルのな。てきとうにゲームやってゆっくりボイスに喋らせて、投稿するだけ。

 あぁ、なんてしょうもない5年間なんだろうか。


 はっ!夢か。

 人と比べっ子するのはあまり好きではない。

 午後6時、もうこんな時間になってしまっていたのか。この時間は親父が帰ってきてしまう。5年ぶりの再開(?)は流石に気まずいな。

 自分の部屋に戻ってまた寝よう。

 

 幸せな夢を見たいな。


 他の人が一人も存在しなくて、自分と比べる必要がない夢をな。

 


 

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