きゅうりの糠漬けなんかじゃない、わたしゃシンデレラ。なんかでもない

長月 有樹

第1話

「ショートスリーパーで暇人て一番辛いよね」


 彼はそう言って、加熱式たばこを吸う。私の部屋のリビングで何も思う事はない感じで当たり前に煙をぷかぁと吐く。


 家賃月12万円の埼玉の田舎の駅まで徒歩10分のマンション。家主は私。当然支払いも私。つまり当然、私の家で同棲をかれこれ3年近くしている3歳年下彼氏と暮らしている。彼は30になるが一度たりとも就職はせず、現在に至る。そんな彼の煙草の煙が私の家を行き場も無く、もんわりと空中を彷徨っいる。


 分かりやすく怠惰という言葉がしっくりくるカーペットに座っている彼に何も言わず、キッチン換気扇をつけ、ベランダに繋がる窓を開ける。私も私で彼に慣れてしまっている。


 彼は言葉を続けない。私の「で?」待ちだった。会話をしたいというというより自分の言葉を聞いて欲しいのは分かっていた。だから私は「で?」をしなかった。黒いボックスケースに入っている紙巻きたばこを1ほん取り出し、火をつける。そして深く深くさらにおまけでも少し深く煙を肺に入れる。彼より濃く、白い煙を吐き出す。その煙に当てられたのか、彼がゴホゴホと咳き込む。キッチンの排水口近くでトントンと灰を落す。


 その間も餌をおあづけされている犬みたいに視線を私から外さない。ロックオンさている。じーーっと私を見ている。だから言った。


「で?」


「だから俺って可哀想じゃない」と何度も騙されてきたつぶらな瞳で。彼は本当に世界で一番なのは自分で間違いないと確信しているようだった。


「だって俺って3時間しか寝てないじゃん、別に何かあるって訳でもなく、かと言って何かやりたいわけでも無く。人より長く退屈な時間が多いんだよ、それって不公平で不幸じゃない?」と彼が続けるのでソーデスネソーデスネでとホーホケキョみたいに私はロボットみたいに相槌を打つ。


 彼の世界一不公平かつ不孝ショートスリーパー漫談のギアが上がり始めると私は、「ごめんね、もう会社行かなきゃ。続きは帰ってから聞くから」と玄関へと向かいながら彼の漫談を遮る。嘘。リビングからまだ続きが聞こえてきた。


「いってきまーす。」と言いながら、靴を履き扉を開けたるとラッシャセーと何故か居酒屋バイトのレスポンスが返ってきた。


 エレベーターで下降して1階に辿り着く。エントランスロビーの自動ドアを潜って外へ出る。マンションを見上げる、ほんのさっきまで私の部屋、503号室を。


 スウッと瞳を閉じて深呼吸をする。息を吐く。瞳をこれまたスウッと開ける。


 無理!!!!無理無理無理無理無理無理。私は疾走する。疾走する。手を思いっきり振り回しながら。大股で走る走る走る。コレは衝動的な感情では無い。何たって履いてる靴はスーツ姿なのにnew balanceのランニングシューズ。


 ソウダ。私は走りたかったのだ。逃げたかったのだ。もう無理なんだ。てかなんならずっと無理なんだ。どう考えても無理だったんだ。いや無理に決まってじゃん。無理の無理による無理のための無理王ってヤツだった。あいつは。


 なんだあの甘ったるい割にはしんどい牢獄は。地獄だわ。なんであんな地獄みてえなクソみたいな毎日をわざわざ自分からやってたんだろう。


 はぁはぁっと数分も走っていると息が切れてきた。当たり前だ若くは無い。30代女子年相応の体力なんだ。なめるな、マジしんどいわと思いつつ、会社へと欠席の旨の電話を入れる。息を切らしつつ、身体しんどいし熱っぽいんで休みまーす!!と豪快な連絡を入れる。


 上司は明らかに不信感ありまくりな声色だった。露骨に私を疑っていた。ところがどっこいこのご時世、熱っぽいは魔法の言葉。了承の言葉をもらい電話を切る。


 目的地の駅に着く。券売機で新幹線のチケットを買う。目的地は愛知県の三河地方への自由席。丁度来た電車に飛び乗り、東京へと向かう。


 電車に乗っている間にスマホで東京駅への到着時刻と新幹線の時刻を調べる。乗り換えに10分も無い。


 東京駅に着き、電車の扉を開いたと同時にダッシュダッシュダッシュ!!のダッシュ四駆郎。私は止まらない。というより自分でも止められない。階段を駆け下りギリギリ新幹線に無事ライドオン。GoGoひかり。名前の通り光の速さで私を連れてって愛知県の知立市へ。Go!!Go!!ヒカリアン。


 新幹線の自由席に無事座れ、やっと一息つける。と同時に自分がフツウじゃない事をしているなと思う。けどすぐに否定する。普通じゃないのはあの日常の方であると。


 ブルートゥースイヤホンのケースをカパッと開けて両耳に嵌める。そして音楽を聴く。


 想い出のあの曲を。激しい演奏のロックミュージック。けれどボーカルは全てを包み込むくらいに優しく弱弱しさを感じてしまうけれど。けれどその儚さが何かを訴えてるみたいな必死さをどこか感じさせてくれる。


 あの人の声────を思い出そうと目を瞑る。


 直後、瞼が閉じてるのに暴力的な白い光が一気に広がる。


 チュドン。爆発。大爆発。と同時に新幹線が崩れ落ちる。






 ごめんなさい。ホントにごめんなさい。嘘つきました。終わってないです。無理でした。本当にごめんなさい。マジで無理だなーと思いながら書いてました。何も思いつきませんでした。


 もしココまでお読みい頂いた数少ない方々、本当に申し訳ございませんでした。いくら普段から文章を書いてない素人の作品でも良くは無いよなーとは思っております。


 けど、さすがに誠実な謝罪をしようにもこんな事をぐだくだ書いてあるヤツの誠実さなんてハッタリっしょ。


 これ以上、言い訳を連ねると、そんなん書けるなら書けよと流石に自分でも思うので。ココで締めさせて頂きます。


 ごめんなさい。


 最後に1点補足させて貰いますけど、Go!!Go!!ヒカリアンてワード。おもろいと思って書いてます。


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きゅうりの糠漬けなんかじゃない、わたしゃシンデレラ。なんかでもない 長月 有樹 @fukulama

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