この世界はとても狭くて広い。

青いバック

狭く広い

 この世界は狭い。そう思っていたのは今は昔のこと。反抗心だけが心の中でメキメキと育って、思考という栄養は全て吸われていた。


 頭を金髪に尖らせて、この世界は狭い。自分は窮屈な世界で無理やり生きさせられてる、と恥ずかしい勘違いを誇って生きていた。視力はAと良いくせに色眼鏡をかけてしまって、物の見方の視力はDに落ちていた。

 誰にも反抗して、自分は線路の上を歩かない。この世界は狭いんだ。と言っていた、当時の口癖を振り返れば、とても恥ずかしくて目も当てれない。


 屁理屈をこねるならば、世界を一周するのは大変なので狭くはないと言えるだろう。しかし、この時の私にそんなこと言っても無意味だ。世界が狭くてそして広いと気付いたのは、挫折を経験した頃だろうか。


 引かれた線路の上を歩かないと豪語していた私は見事に落ちぶれていった。それも綺麗に、真っ直ぐ抗うことすら出来ないほどに落ちていった。


 当然、周りの人達は口々に私のことを「非行少年だから」と言っていた。否定は出来ないので、ただ笑って過ごすしかない。

 でも、かけていた色眼鏡が地面にカチャンと落ちた瞬間に私の世界は広がった。


 一つの面からしか物事を見ていなくて、自分の世界を狭めてしまっていたのだな。と気付いた時は自分の愚かさが五臓六腑に染み渡って、耳が真っ赤になった。


 そこからは、狭い、狭い、狭い、と感じていた世界はやけに広くて歩くのが大変になった。その時にふと後ろを振り返ると、錆び付いてしまった、私が歩くべきだった線路があることに気付いた。遅いかな、と思ったけどただ錆び付いているだけ。歩くことは可能、今すぐ落ちる訳でも無いし。


 もし、色眼鏡をかけているなら今すぐ壊した方がいい。私の線路は錆び付いていたけど、それは落ちてしまうものだから戻れる内に戻った方がいい。線路を落としても叶えたい夢があるなら、後ろを振り返らずに突っ走ればいい。今の貴方は線路を作っている最中だから。

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