小さな魔女たちのイタズラ

一陽吉

おじいさんに刺激を与えよう

「ねえ、魔夜マヤちゃん」


「なあに、真夜マヨ


「魔法、使いたいね」


「そうね。でも、人の役に立つことでないと使ってはいけないことになってるわ」


「それでさ、あのおじいさん、いっつも、ひなたぼっこしてるよね」


「たしかに、晴れた日は一日中、縁側でぼ~~としてるみたい」


「なんかヤバいんじゃない」


「ヤバいって?」


「ああいうのって、ニンチショウていうやつになるんじゃないのかな」


「まあ、湯吞を持ってプルプルしてるだけだから、何も考えてなさそうだわ」


「予防するには、なにかがあるといいって聞いたことがあるよ」


「刺激って?」


「例えばさ──」


 コショコショコショ……。


「なるほどね。だったら──」


 コショコショコショ……。


「うん! いいと思うよ」


「それじゃあ、さっそく始めましょうか」


「よーし、まずはおじいさんのまわりを真っ暗な異空間にするよー!」


「おじいさん、湯吞を持つ手が止まった。いい感じ。今度は私の番!」


『グオオオオーーーーーーーーーーーーーーン!』

『ギャオーーーーーーーーーーーーーーーーン!』


「ドラゴンちゃん二体の登場だ! 赤と青で分かりやすいね」


「さあドラゴンたち、戦いなさい!」


 ゴオオオォ──────────────────。

 ゴオオオォ──────────────────。


「同時にブレスを放ったよ!」


「余波の炎でも熱くないから安心してね、おじいさん」


『グオオオオーーーーーーン!』


 ドゴン!


『ギャオーーーーーーーーン!』


 バゴン!


「今度はボクシングだ!」


「八メートルの巨体で殴り合いだから迫力満点だわ」


「でもおじいさん、動かないね」


「あら、まだ足りないのかしら。だったら──」


 ブ────────────────────ン!


 バアァーーーン!


 ブ────────────────────ン!


 バアァーーーン!


「うわー、尻尾の打ち合いだ!」


「おじいさんの頭すれすれで振ってるからスリルは最高のはずよ」


「見てみて、おじいさんの頭から魂が出てきた!」


「小さくふるえながら魂が微笑んでるわね」


「天にも昇るかんじで喜んでるんだね!」



「こら────────────────────っっ!!」


 パキィィーーーーーーーーーーーーーーーーン!!


「魔法が解けた!?」


「ていうか、この声」


「「お母さん!!」」


 ゴン! ゴン!


「ダメじゃないの! おじいさん相手に魔法を使っちゃ!」


「で、でもわたしたち……」


「おじいさんのために……」


「よくみなさない! あのおじいさん、天国へ行っちゃうところだったのよ!」


「はううううぅ……」


「ごめんなさい……」


「おじいさんは夢を見ていたことにするから。さあ、ほうきを持って。帰るわよ!」


「「はああい」」

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小さな魔女たちのイタズラ 一陽吉 @ninomae_youkich

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