第14話始まりの日

ドルガーに着くと、前にもきた応接間に案内された。


そして、ルキトとリンクの傷の手当てをしながら、待っていると、社長と言われる40歳くらいだろうか?思ったより若い、スタイルも良く、清潔感のある男性と20代後半か30代前半といった感じの、冷徹そうなシルバーのメガネが良く似合う男性が現れた。


「君が月谷李弥くんか、ルキトのデスクでよくみてたけど、本物はやっぱりカッコイイ青年だね」


そう言われて、社長に握手を求められて、慌てて俺も手を握った。


「は、初めまして」


「社長、ミーハーなことしてる場合じゃないですよ」


あっ、この声は一度ルキトに初めて会いにいった時に、怒ってた人だとすぐに分かった。


低くていい声だ。


こうして見ていると、男性秘書キャラって感じで、少し妖艶に見えた。


「すまんね、私はドルガーの創立者八神ケイトだ、そして、彼は私の秘書でもあり、ハンターでもある三井リョウガだ」


「初めまして」


リョウガも素気なくだがそう言ってくれたので、俺も「よろしくお願いします」と答えた。


「あれ?一人足りなくない?」


ルキトがそういうと、


「昨日からあいつは旅に出てね。丁度リョウガの相棒が手薄になってしまったんだよ」


「また?好きだね、徘徊」


「こら、ルキト。お前よりは…いや、同じくらいか…あいつも猫みたいな性格だから、そのうちすぐ帰ってくるだろう」


リョウガは自分の相棒のフォローしきれないことが、滲み出ているが、頑張って味方していることが、お見受けできる。


きっと、この人も優しい人なのだろう。


「それで、李弥くんはドッペルゲンガーを取り込んで力に変えたんだってね?」


「力に変えたというか、気づいたら一体化してしまっていて…ただ、俺は侵食されずに、、ちゃんと自分でいられていることに、安堵しています」


そう、実感はないのだが、間違いなくドッペルゲンガーは俺の中に入り、抹消はしていない。


自分とは違う感覚をあの時感じた。


「そのうち、自分の力を操れるようになるよ。それまで、李弥の面倒は僕が見てあげるから」


ルキトは俺を後ろから抱きしめて言った。


「それは…なんとも言えない…」


なんとも言葉にしづらい感情だ。


「まあ、俺もヒスイが帰るまでリンクに相棒を頼むつもりだったし、いいんじゃないか?」


「いつも、ヒスイがいない時は常連だよね」


リンクも相棒が変わることに、なんの抵抗もないらしい。


「そうだよ、それでいつも僕は一人ぼっちだったから、李弥がいてくれて嬉しいよ」


本当に、ルキトの輝くほどの笑顔に、俺もつられて笑ってしまう。


「まあ、芸能活動はやめないけどね、でも、宿った力が役に立つなら、よろしくお願いします」


「喜んで」


俺のような自分を見失いかけている人たちが、ガダウトの餌食になっている。


そんな人たちを一人でも多く助けることが出来るなら、喜んで助けにいきたい。



ふと、悪寒が走った。


「李弥?」


「たぶん、この近くにドッペルゲンガーがいる気がする」


そういうと、俺の左眼が紅く光っていることが、自分でも分かるほど、少し熱をもっていた。


「李弥の眼が紅い」


「なるほど、ドッペルゲンガー探索の能力と防御能力が備わっているわけだ」


社長は、面白がった表情で頷いた。


「よし、さっそく仕事だ。ルキト、李弥行って来なさい」


「はい!」


俺はルキトと頷き合い、走り始めた。


新しい世界へ飛び込むように。


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