第13話覚醒
リンクも異能で作られたパソコンを消すと、俺に駆け寄った。
そんな光景を、トゥルスは満足そうに見つめ演奏を始める。
「さあ、仲間を受け入れよう」
トゥルスの演奏と共に、リンクの結界がなくなった神社にどこから湧いて出て来たのか、正気を失ったドッペルゲンガーたちが現れた。
「ドッペルゲンガーとなった、人間は我が社の駒よ」
「ブラッディ・ローズ」
ルキトの帽子から薔薇の太い茎が鋭い棘と共に飛び出し、ドッペルゲンガーたちをムチで叩くように振り回した。
「しまった…」
リンクも再びパソコンを取り出し、映し出された映像に、タッチパネルで赤い線を引いていった。
「俺だって、守るだけと思ったら大間違いだからな」
リンクが画面に赤い線を描くと、それに引っ掛かったドッペルゲンガーたちは蜘蛛の巣に引っかかったように動きが鈍くなった。
しかし、トゥルスの音色によって狂気的になったドッペルゲンガーたちを二人で食い止めるには無理があった。
リンクの蜘蛛の巣をすり抜けた一人がルキトへ攻撃を仕掛けて来た。
「ルキト!危ない」
ルキトはそのドッペルゲンガーにきづいたが、こっちも手一杯で、攻撃を交わすことが出来なかった。
その時…
緑の光がルキトを守った。
ルキトもリンクも今起きている現象がわからずにいると、ルキトの腕の中で守られていた李弥が目を覚まし、左眼が赤く光っていた。
「もう、大丈夫だから」
そういって、俺はルキトに笑いかけた。
自分の現象がわからない。
けど、何かの力が自分から湧いてくるのは分かった。
「まさか、ドッペルゲンガーを自分に取り込んだというのか?侵食されなかったと?」
その瞬間、トゥルスは演奏をやめた。
「これは面白い実験結果が見えた。今日はここまでにしといてやるよ」
そういって、違う曲を演奏すると、バイオリンに吸い込まれるように、ドッペルゲンガーたちがいなくなった。
「おい、まて!」
そんなルキトの言葉も聞かず、トゥルスも去っていった。
残された俺は、みなぎる力が抑えられず、そのまま佇んでいると、ルキトが肩に触れた途端に元の自分に戻れた。
「李弥、無事で良かった。無事…といっていいのか分からないけど」
「ああ、ルキトの言葉のおかげで、自分に勝てた気がするよ。ありがとう」
そう微笑むと、いつものおどけたようなルキトに戻り、目を輝かせて俺に抱きついてきた。
「李弥、カッコいい」
そんな戯れを、リンクも呆れながら微笑んで見ていた。
「とりあえず、社長に報告しに帰るよ。李弥も一緒にね」
「えっ?あ、うん」
こうして、俺たちはドルガーの事務所へ戻っていった。
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