第2話 少女と噂話
やば....吐きそう....
一人、そこには顔色を悪くした美しい女性がいた。彼女の名はニナ。
ニナは噂話の真相を確かめるため、機関車に乗ってエスコフという町まで来ていた。
しばらくは機関車には乗りたくないものである。
彼女はそもそも外に出ることが苦手であった。自宅から徒歩3分の喫茶店、仕事は基本的に自宅でやっていた。
暴徒化の研究員とは言ったが、そもそも暴徒化とは何が原因で、どんな特徴があるのかすらわかっていない。
つまり、彼女はそれっぽいことをそれっぽく報告していただけである。
報告できるのは暴徒化した被害者、変異した後の身体的特徴、周辺の被害くらいである。
興味が無いわけではない。しかし、情報が無く、根拠も無いような話は誰も信じないであろう。わかっていることを報告するだけで十分だと思っていた。
嫌な仕事の話は忘れてニナは噂話の調査...もとい、観光を始めた。
とりあえず、エスコフの中心にある小さな鉱山...というより、寂れた洞窟に入っていった。
洞窟の中は狭く、湿っていて居心地が悪かった。
噂話の調査という名目もあるため、仕方なくエスコフの中心にあった洞窟を調査していた。
とりあえず奥まで行こうとした。が、入って数歩したところの岩に文字が。
「この先立ち入り禁止」
現在では使われない文字であろう。
しかし、どこかで見たことのあるような文字であったため解読することができた。
調査のためとはいえ、自分の身を危険に晒したくはない。とりあえず引き返して観光を....と思ったが、この先に何かある気がした。
ニナは自分の直感に従い、奥に進んで行った。
低くなる天井、狭くなる通路、見たことの無い生き物...居心地が悪くなっていく洞窟に嫌気が差し、振り返ろうとした時である。
目の前に先程と同じ文字で岩に何か書かれていた。ニナは目を疑った。噂話からこんな大きな成果を得られるとは思わなかった。ニナは急いで解読を始めた。
「ある......魔.....化...魔人......得る魂.....その力は....」
岩は劣化していたため、読めない箇所が多くあった。これだけでは何もわからないため、周辺に何かないか探した。
近くを探してみると壁画があった。
そこには角の生えた暴徒が人の首を絞めている画、長い爪を持った暴徒が町を切り裂いている画、羽根の生えた暴徒が国を燃やしている画が描かれていた。
この画が暴徒の特徴と力の強さを表しているならとても大きな収穫である。
ニナは岩に書かれていた内容と壁画を記録し、急いで仕事に取り掛かった。
後の話であるが、彼女の報告を聞いた他の研究員が洞窟を捜索したが、文字を解読することができなかった。
見たことのない文字を解読することができたニナ自身の調査が進められ、あることがわかった。
血濡れの少女事件は暴徒化した少女であり、少女は数分で暴徒化が自然に治まり眠ったこと。そしてその後に身元が不明になったこと。
通常の暴徒であれば死ぬまで暴徒の状態で暴れ続けるが、少女は収まったというのである。
そして、その少女の名前を調べると研究員の予想通りの名前が出てきた。
少女の名はニナ・ヘンデカ
これは、一つの噂話から始まった少女の記憶探しの物語
血濡れの少女 LLLer @tititikukuku
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