血濡れの少女
LLLer
第1話 少女
ある雨の夜、一人佇む少女がいた。
少女は一人孤独に雨に打たれていた。一人、ただ一人、何かを待つように佇んでいる。
裸足の少女の手には血と雨に濡れたナイフ。
幼き少女はその日、両親を惨殺した。
少女のその後の行方はわかっていない。
数年前のこの事件を人々は"血濡れの少女事件"と呼んでいた。
空気が凍える朝に喫茶店でカップを傾ける一人の女性がいた。
彼女の名はニナ。
短く切られた美しい髪、深い茶色の瞳、小さな体には大きすぎるコート。
周りとは違う、異質の雰囲気を放っている。
それもそのはず。彼女はとある研究員である。
近年、人類は今までに見たことのない事象に直面していた。
人々が突然変異し、暴徒と化すのである。
ただの人が暴徒とするなら鎮圧することは容易である。しかし、暴徒と化した人々は強大な力を得るのである。
その力は計り知れず、個体差もある。
ある暴徒は集落を破壊し、最近の事件では暴徒は1つの国を破壊した。
ここ最近、やれ研究を急げだの、暴徒になる原因を探せだの、今回現れた暴徒の特徴は何だのと...仕事に狩られ頭を抱える毎日である。
ニナは紅茶を飲み干し、喫茶店を出ようと扉に手を伸ばした。
「例の暴徒化事件、聞いた?」
「聞いた!暴徒化ってエスコフを中心に起きてるって噂も流れてるよ!」
「あっ、その噂ね!あそこになんかあるのかな?」
...店内で雑談をしている女性2人のくだらない噂話だった。ニナのような暴徒化の研究員からすれば馬鹿げた話である。
しかし、ニナは一昨日起きた暴徒化事件で仕事に追われてたため、ふと気になったのである。
都心から離れたエスコフという町は鉱山で有名である。都心より発展はしていないが、美しい鉱山、物珍しい鉱石があり、機関車が通っていることもあるため、観光業はとても賑わっていた。
すこし、行ってみようかな。
馬鹿げた噂話のある町へ足を運ぼうと思ったのである。それに、酷く疲れていたので少しの休息も必要であろう。
ニナは自分の気持ちに甘えようと思った。
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