第46話 高校時代に出会っていたら。

 入院して三週間目、足のリハビリも進み、今では膝を曲げる所まで出来るようになってきた。

 曲げては伸ばす、以前は当たり前に出来ていた事が、こんなにも大変になるとは。

 

 他にも、車椅子からの乗り降りの練習とかで、腕の力もかなり酷使している。 

 治療が進めば松葉杖で済む様になるのだろうけど、今は車椅子が必須だ。


「汗だくになっちゃうもんなんですね、お疲れ様です」

「ありがとう、普段の運動不足もたたってるんだろうね」

「では退院して歩けるようになったら、一緒に散歩ですね」

「ああ、うん、そうした方が良いんだろうね。……時に、琴子さんさ」

「はい、なんでしょうか?」

「その服装、どしたの?」


 ベッドに戻り、上半身の汗を拭きながら琴子さんに質問を投げた。


 琴子さんの服装は、上は薄手のブラウスを着用して、首元にはピンクのリボンネクタイを付けている。下は短めのプリーツスカートにハイソックスとローファーという、どこからどう見ても夏の女子高生スタイルだ。


「いえ、目の保養があった方が、俊介さんの治りが早いと祥子さんから言われたものでして」

「そんなことないと思うけど……でも、心意気は頂戴いたします」


 僕の高校生活は、女子生徒に現を抜かす暇すらなかった。

 生徒会に立候補して、クラスの委員会にも率先して参加して、行事のほとんどに参加して。

 楽しかったし、頼られるのが好きだったから、別に後悔はしていないけど。


 でも、そんな優等生生活を送っていると、自然とハードルが高くなってしまうらしい。

 誰も僕に告白をしなかったし、僕もすることはなかった。

 仲の良い女の子はいたことにはいたけど、恋愛感情に発展することもなく。

 女子の制服が妙に眩しく感じられたのも、今となっては良い思い出だ。

 

「珍しいですね、俊介さんが私の服をそんなにじっと見るなんて」

「あ、いや、なんだか懐かしいなって思って、つい」

「……いいですよ? 触ったり、めくったりしても」


 汗をふいたタオルを片付けると、琴子さんはおもむろに近づきながら、スカートの両端を西洋の挨拶、メイドさんが良くする挨拶であるカーテシーの様に持ち上げた。

 ただでさえ短かったスカートが持ち上がると、琴子さんの細い太ももが限界まで露わになって、やっぱりそこに目がいってしまう。


「こんなことするの、俊介さんだけですからね? 他の誰にもしたことないですし、正直なところ、いま心臓が爆発しそうなぐらいに動悸が激しいです。ですから、はしたない女の子だなんて、思わないで下さいね」


 顔を見ればそれは分かる。

 視線をそらしながら耳まで真っ赤にしているのだから、一目瞭然だ。

 

「それに私、女子高でしたから、親しい男子とかもいなかったですし」

「僕も高校時代に彼女がいたことはなかったな……もしいたら、それなりに楽しかったのかも」

「そ、そうなんですか? じゃ、じゃあ、ちょっとだけ試してみます?」

「試す?」


 持っていたスカートを手放すと、琴子さんは先ほどのタオルを畳んで手に持った。

 そして恥じらいの表情のまま、僕へと差し出す。


「せ、先輩、お疲れ様です。良かったらこれ、使って下さい」


 うお、いきなり風景がグラウンドになって、琴子さんが部活の後輩に見える。 

 上半身裸だし、さしずめ僕はサッカー部員ってとこか。


「ありがと、えっと……古河も毎日ありがとうな、僕の練習に付き合ってくれてさ」

「呼び捨て! あ、あはは、なんか新鮮、ですね。どぎまぎしちゃいます」

「だって、部活の時とかって名字呼び捨てが基本じゃなかった?」

「それは親しい人たちだけですよ。でも、距離が近い感じがして、それもまた良いです」


 懐かしいな、もう十年くらい前になるのか。

 実際こうしてタオルを渡してくれる女子もいたけど、思えば、あの子は僕に惚れてたのかな。 


「あ、いま、誰か違う人のことを考えてますね?」

「え? いや、ふと思い出してみると、実際にこんな事があったなって思ってさ」

「そうなんですか、その子とはお付き合いしなかったのですか?」

「さっきも言った通り、僕は高校生時代に誰ともお付き合いしてないよ。もしかしたらその子は、僕のことを想っていたのかもしれないけどね」

「なんで、そう思うんですか?」

「だって、雰囲気が今の琴子さんと似てたから」


 今なら分かる、琴子さんは僕のことを愛してくれている。

 そして僕も、琴子さんのことを愛している。


「そんな答え合わせ、ズルいですよ」

 

 片膝をベッドに乗せて、琴子さんは僕にキスをする。

 軽い、唇の薄皮がくっつくだけの、学生みたいなキスだ。

 

「私的には、これでも満足なんですけど」

「うん」

「あの……祥子さんとは、どんなキスをしてるんですか?」

「え、知りたいの?」

「色々と話は伺っておりますので、出来たら、同じのをしたいなって思います」


 嫉妬かな? でも、それを望んでいるのなら、僕は彼女の要望に応えるだけだ。

 二人との接し方に、差があるのはきっと宜しくない。

 同じにしないといけない、常に平等に、僕は二人とも愛しているのだから。


「……じゃあ、口、開けて」

「は、はい……ん、っむ」


 琴子さんの口腔内に舌を入れるのは、初めてのことだ。

 僕は二人と接する時は常に受け身だった。

 されるがままにすることで、責任を擦り付けていたのだと思う。

 とても卑怯なことだ、男として許されることじゃない。

 

「……ん、うぅ、は、はぁ、ん……んん」

 

 琴子さんの舌は、祥子さんよりも小さくて、細い。

 頬の裏側や、舌の裏側をちろちろと舐めると、素直に反応するあたり、感度は良さそう。

 絡ませた舌を互いに舐めあって、そこから更に僕は琴子さんの歯を舐め始める。

 包み込むように、彼女の全てを余すことなく堪能しつつ、僕は次のステップへと移った。


「はっ、はぁっ、はぁっ、あっ、あの、俊介さん」

「うん、祥子さんとはね、Bまでいってるんだ」

「び、びぃ、ですか? それは、つまり」

「うん……おっぱい、かな」

「ほ、本当にそこで止まるものなんですか? それに私、胸は祥子さんに勝てない、あ」


 学生服のボタンを外すと、なんだか犯罪めいている感じがして、それがまたどこか興奮する。

 首元のリボンは付けたまま、上から四個ほど外すと、彼女の下着が顔を覗かせてきた。

 白くてレースのついたブラジャーは、琴子さんの言う通り、祥子さんほどの大きさではない。

 けど、そんなのを凌駕するほどに、真っ白な肌と形の良い乳房が目に飛び込んできて。


「……ブラ、外すね」

「は、はい、どうぞ」


 断りを入れる必要なんかないのかもしれないけど、勝手に外すのは気が引ける。

 制服の中に手を入れ、背後にある二つのホックを外すと、それまであった谷間が姿を消した。 

 寄せてあげる感じだったのかな? いや、ブラを付けると寄って谷間が出来るのか。

 手のひらサイズの乳房を優しく包むと、琴子さんはその身を捩らせる。


「ど、どう、ですか?」

「柔らかいね、ふにふにだ」

「そ、そそ、そうですよね。ありがとうございます。じゃ、じゃあ、これぐらいで」

「ううん、僕は祥子さんの乳首を舐めてるよ?」

「ふぇええ!? そ、そうなんですか!? 一体いつの間にそこまで……わ、分かりました、いいですよ。覚悟決めましたから……ど、どうぞ」


 反応が初々しくてとっても可愛らしい。

 普段しっかりした感じなのに、ギャップが凄いな。


 琴子さんが両手でブラウスごとブラジャーを持ち上げると、恥ずかしくて震えているのか、小刻みに揺れるピンク色の乳首が顔を覗かせた。

 

 鼻を近づかせて、くんくんって匂いを嗅いでみる。

 なんて表現したらいいんだろう?

 琴子さんの香りが充満していて、どこか落ち着く。


「な、なにしてるんですか、早く済ませて下さい」

「いや、良い香りだなって思って」

「そんなとこの匂いなんてないですから」

「いや、あるよ? 今度嗅いでみたら?」

「そ、そんな変態みたいなこと、私しないですから」

「もったいない……良い匂いなのに」

「だ、だからそんな――――あっ!」

 

 ぱくって口の中に頬張ると、琴子さんは驚いたのか驚嘆の声を上げた。

 我慢できないのだろう、でも病室だから、琴子さんは必死に声を抑えようとする。


 舌のざらざらした面でしっかりと舐めると、柔らかかった部分が段々と固くなって。

 右のが完全に固くなった後、左側のを同じようにしっかりと舐め続ける。

 犬のようにペロペロと延々に舐め続けるだけで、琴子さんはその身を何度か痙攣させた。


 可愛くて、従順な琴子さんを見ていると、僕の中の違う部分が顔を出しそうになる。 

 何度目かの痙攣を味わせて……これ以上はダメだな、ストップしないと止まらなくなる。


「はっ、はぁ、はぁ……っん、はっ、はっ、……はぁ、はぁ」

「ごめん、やり過ぎたかも」

「はぁ……はぁ……ほ、本当、やりすぎです。腰が立たなくなっちゃうじゃないですか」

「……ふふっ、でも、そんな琴子さんも、可愛くて好きですよ」

「な、なに言ってるんですか……ばかぁ」


 学生時代に、琴子さんと出会わなくて良かったと思う。

 もし出会ってしまったら、多分、僕達は肉欲に溺れていたことだろう。

 大人になった今だから、制限が掛けられる。

 それに祥子さんもいるんだ、僕一人でどこまで二人を満足させられるか。


「そういえばなんだけどさ」

「……いま、ちょっと休憩させて下さい」

「ああ、ごめん。いやね、この前祥子さんから、琴子さんが僕の妹になってる聞いたんだけど。あれ、本当?」


 僕のベッドに横たわる琴子さんは、しばらく呆然とした後、僕を見てこう言った。


「本当ですけど……なんですか、次は妹プレイがしたいんですか」


 そういう意味じゃない。

 そういう意味じゃないけど、それもそれで期待できちゃいそうな。


 ダメだ、最近話の本題が速攻でそれて、本来何を言いたかったのか分からなくなる。

 とりあえず、キスでもして終わりにしておこう。

 大事な話は退院してからでも、十分間に合うはずさ。

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