第6.5話 やっぱ帰ろっか
何となくホラー映画の雰囲気を感じる。このままこの館をうろついていたら謎の殺人鬼に襲われてしまいそうだ。好奇心より恐怖心が勝ってしまい、俺は前に進んでいた足を止め、くるりと180度反転させる。
「ごめんなさ~い……。帰りますぅ~。失礼しましたぁ~」
まだ目にしていない館の主に届くように独り言を廊下に響かせ、俺はゆっくりと慎重に玄関へと向かった。ここは自分のような人間が軽い気持ちで入っちゃいけない場所なのだろう。それだけは直感で分かる。
一歩一歩足を動かす度に、どこかから罠が発生しないか心配になる。そう思わせるほどの不気味な雰囲気をこの館は発していた。
極度の緊張感に押し潰されそうになりながらも、俺は何とか無事に館の玄関に辿り着いた。後は目の前の立派なドアを開けるだけだ。あっさり入れたのだからあっさりと出られるはず。やっとこの圧から開放されると、俺は希望を胸に懐きながらノブを握ってドアを押した。
「あれ?」
おかしい、ドアが開かない。俺はその後も押したり引いたり色々試したものの、どうやってもドアを開ける事が出来なかった。これはつまり、ここからは出られないと言う事だ。
この館に他の出入り口があるのかどうかは分からない。ただ、入って来れた場所が封じられていると言う事は、別の出入り口がもしあっても、そこから脱出する事は出来ないのだろう。
逃げる事が出来ないのなら、もう前を向くしかない――。
俺は決意を新たに振り返ると、改めて館の内部へと踏み出したのだった。
https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330649030477182
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