第5話 呪われた聖剣
グダグダ考えても結論は出ない。やらない後悔よりはやった後悔だ。俺は剣の柄を握り、腕に力を込める。もし自分に勇者の資格がなければ、多分ビクともしないのだろう。
でも、シーリィは俺を勇者と言ったんだ。抜ける、俺はこの剣を抜いてみせる。勇者だって証明してやる!
「おらあぁぁぁぁあ!」
俺が力を込めると、呆気なく剣は抜けた。あっさり行き過ぎて、この剣自体が偽物なんじゃないかと思うほどだ。俺は抜いた剣を天にかざして、その刀身をしっかりと確認する。抜いた直後は石のような材質だったものが、全体が外気に触れた事でその真の姿を表し始めた。
剣先からフィルムが剥がれるように本来の姿に再構成されていく。その神秘的な光景に俺は見とれてしまった。
「すげぇ……」
やがて、伝説の剣がその本来の姿を取り戻した。キラキラと光り輝いていて、まさに伝説の聖剣と呼ぶにふさわしい輝きを放っている。魔王を倒すと言われる最強の退魔の剣は、こうして俺のものとなった。
俺が感動に打ち震えていると、完全な姿になったにも関わらず剣の変化がまだ続いている事に気付く。
「ん?」
刀身に刻まれていく謎の文字列。そしてこの変化が起こったと同時に剣から湧き上がってきたどす黒いオーラ。嫌な予感に俺の体は震え始めた。やはり罠が仕掛けられていたようだ。
無数の蛇のような気持ち悪いエネルギーが剣を包み込んでいく。これは――呪いッ!
「伝説の剣、呪われていたのかよぉ!」
この呪いは伝説の剣に宿る聖なる力を封じるものらしい。その副作用で、握っているとどんどん魔力が失われていく。どうやら当事者の魔力を利用して発動する呪いでもあるようだ。
幸い、装備が外せない系の呪いでなかったので、俺は剣を強引に放り投げた。呪いが体全体を侵食するのを防ぐためだ。フリーになった両手を確認すると、呪いそのものは残留していない。そこまでしつこい効果のあるものではないようだ。
「どうにかこの呪いを解かないと……」
俺はシーリィに教えてもらった浄化の魔法や封印解除の魔法をかける。しかし系統が違うのか、剣の呪いは解けなかった。
キーアイテムを手に入れながらそれが使えない。この事実に俺は落胆する。
そこからの旅の目的は、この剣の呪いを解く事になった。けれど、どんな呪いも打ち消す聖剣にかけられた呪いだけあって、誰一人この呪いを解く事は出来なかった。俺を勇者と認めてくれた、あのシーリィですらも。
「ごめん、この呪いは魔物由来で私にも解けない。役に立てなくて悪いね」
「そんな……」
「そんな落ち込むんじゃないよ、ハルト。案外レベルが上ったら自力で解けるようになるかも知れないよ。お前は勇者だ。自分の力を信じろ」
俺はこの魔女の言葉を信じ、レベル上げに邁進した。伝説の剣は使えなくても、シーリィからもらった魔法剣がある。通常の魔物退治はこの剣で十分に事足りた。
魔物を倒しまくって地上の魔物なら蹴殺できるほどの力と技術を身に着けた頃、俺は魔物同士がバトルしている場面に遭遇する。よく見ると、巨人の魔物がスライムを一方的に殴りつけているようだ。
巨人の連打に一切反撃出来ないスライムは、今にも死にそうになっている。
スライムが可愛そうだ。助けよう
https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330648991408679
どっちも魔物やんけ、両方殺すわ
https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330648991483048
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