第4話 突然のクーデター
俺はこの実験室生活に満足して、のんびりニート生活を楽しんでいた。毎日食っちゃ寝食っちゃ寝……どうせ戻れないならエンジョイしたもの勝ちだ。怠惰な生活に慣れてくると生活のリズムも崩れてくる。
朝は昼まで寝て、夜は夜明け近くまで起きていた。勉強をする必要も働く必要もない。必要がなければやらない。当然の話だよな。
この実験室都市は俺がいた地方都市を再現したもので、当然ネットも繋がっている。地球の情報は何ひとつ知る事は出来ないものの、ネットを通じた娯楽は再現されていた。そう、オンラインゲームだ。
接続先の他のプレイヤーは多分AIとかなのだろうけど、リアクションが人間そのもので、本当の人間を相手にしている感覚でゲームを楽しめる。これにハマったのだ。
何の生産性もない日々を過ごして、本当にこの星の科学の発展に寄与しているのかは分からない。それでも観察していると言う事は、地球人を堕落させるための研究をしているのかも知れない。
それでも俺は構わなかった。元々エンジョイ勢じゃなかったから孤独には慣れていたし、淋しさを忘れせてくれるものがここにはたくさんあった。友達も恋人もいなくったっていい。無人島に1人漂着したと思えば、ここは恵まれ過ぎるほど恵まれている。これ以上の贅沢を望むのは強欲すぎるとさえ思う。
「ああ~幸せじゃあ~」
そんなニート生活を満喫して1年が過ぎた。この実験室都市はご丁寧に季節のイベントも再現してくれている。5月の初夏から始まり、暑い夏を過ぎ、実りの秋を迎え、厳しい冬が到来し、暖かな春がやってきた。
気温設定は日本の平均気温を再現しているようで、現実の温暖化の厳しい気候より過ごしやすい。カレンダーは自室にある時計やネットなどで一目瞭然だ。
「ここに来て一年かぁ~。流石に刺激が欲しくなってきたな」
俺はベッドに寝転んで腕を伸ばしながら大あくび。少し昼寝をしようと思ったところで大爆発が発生する。激しい音と強い振動は俺の眠気を覚ますのに十分すぎる破壊力で、恐怖を感じた俺はガバリと起き上がった。自室が被害に遭った訳ではなかったものの、俺はこの非現実な状況の真相を確認しようとネットとテレビを起動させる。
「あれ?」
ネットは繋がらないし、テレビは電源を入れても真っ黒なまま。情報を得られなかった俺はそのまま窓の外を確認する。
「一体何が……」
そこには都市が破壊されている光景が広がっていた。あちこちで爆炎が上がり、建物が崩されていく。場所によっては昔テレビで見た爆発で一気に崩れるビル解体のような現象すら発生していたのだ。
つまり、この実験室は外部からの攻撃的な勢力よって破壊されていた。
「クーデターでも起こったってのか?」
突然やってきたこの非日常な現実に対して、俺は心身共にフリーズする。襲ってきた何かの正体が分からないから当然だ。これもまた実験プログラムのひとつで、ただのちょっと派手な演出なのだろうか? それとも、マジでこの実験を阻止しようとする勢力の破壊工作だとでも?
情報が遮断されて何も分からない以上、対処のしようもない。
「これが単なるイベントだとしたら、やりすぎだよなあ……」
俺は何があってもどうにか出来るように外出の準備だけはした。あちこちで破壊活動が行われているため、部屋を出るかこのまま閉じこもっていた方がいいのか、それすらも判断出来ない。
何も出来ないまま、時間だけが過ぎていった。
助けを待つ
https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330648990666742
逃げる
https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330648990803058
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