第8話 呪いが解けた

 胴体だけになったカボチャの悪魔に容赦なく大砲をぶちかます。後もう少しなのに。


 すると愛しいグレン様が


「……胸の中身のとこに…魔力を感じる…あそこを撃ち抜けばもしかして…」

 と恐る恐る言ってくれた。


「流石グレン様ですわ!!わかりましたわ!!やってみます!!」

 大砲の照準を胸に合わせる。足元は魔法の鎖で巻きつかれて動けなくなっている。シルバーワンドの足止めが助かっている!


 ガチャン!!


 大きな装填の音と共に狙いを定めて撃つ!!


 ビュオンと風が巻き上がり弾は一直線にその場所へと向かった!

 そして悪魔の胸を撃ち抜いた瞬間…強烈な光が破裂し国中に広がる。

 光の破片が人々の中に入っていき……


「ん?私達は何を??」

 と鍵を掛けた塔の入り口から声がした。私は鍵を開け確認するとお父様達は呆然として私を見ている。


「お父様!!」


「ルーシー?…そこで何をしている?いや、私達は今まで……一体??」

 と正気に戻ったようだ。


 *

 一連の出来事を説明してシルバーワンドの楽団の皆さんも王宮にお呼びし名誉受賞とパーティーが開かれた。


 グレン様は式典が終わりパーティーになると壁際で女共に囲まれており私はそれを蹴散らすように割って入る。

 今日もグレン様だけの為に胸が溢れそうなくらいの威圧をかますと女どもはヒクヒクしながら後ずさった。


「グレン様大丈夫ですか?お顔が真っ青ですわ!!」


「…あ…ちょっと囲まれて恐ろしくて…」


「まぁ大変、どこかで休みましょう!!」

 と手を引きまんまと私の部屋へと誘導した!!人払いをしてある。


 ソファーに座らせキョロキョロ落ち着きのないグレン様に果実のジュースを与える。媚薬を混ぜた。


 グレン様は


「あ、ありがとう…王女様」


「いいのです!さぁ、少し飲んでお休みになって!」

 とにこりと優雅に微笑むが内心はこの後既成事実作りのことで頭が沸いている。


「んん…?なんだか熱い…」

 とグレン様がタイを緩めた。効いてるし色っぽいので今すぐ押し倒したくなる。


「まぁ、きっと疲れて熱が出たのですわ!ささ!ベッドで横になって!」


「んん、そんな…王女様のベッドで眠るわけには…ふぁっ!」

 と手を握った瞬間にグレン様は飛び跳ねそうな声を出した。そして私を見てボオッとした。


「グレン様?」


「うぐっ!!??」

 右手で胸を押さえ左手は何故か股間に移動していて内心ニヤリとした!効いてる!!


「グレン様…お疲れなんですわ。ささ!」

 と手を引きひょこひょこついてきてベッドに倒れてしまった。


「うう……?どうしたんだろ?」

 と独り言を言うグレン様は私を見上げると


「お、王女様……ぼ…僕…なんかおかしく…」

 と言い出す。


「まぁ…どこか苦しいのですか?」


「は、はあ…とてもなんか…??うう…」

 何か切なそうにこちらを見ているグレン様は呼吸も荒い。薬が効いてきた。


「グレン様…お可哀想に…私ができることなら何でも言ってください」

 と言うと恥ずかしそうに


「ううう…王女様…」

 と手をぎゅっとしてくれ昇天しそう!


 そしてゆっくりと覆いかぶさるように顔を近付けていくとグレン様が私の頭をガシと挟み目がハートになり強引にキスされる。


「んむ!んむ♡…♡♡」

 と完全に正気を失ったグレン様とその後既成事実作りをした…。


 *

 翌朝…朝日が指す頃に隣から


「ぎゃあああああ!!」

 と悲鳴がしたと思うとベッドから転がり落ちる音と服をかき集める音がして目が覚めた。


「うーん?グレン様?」


「ひいいいいい!!か、隠してえ!ま、まえ前!あっー!」

 と必死で負荷を抱え込み赤くなり目を瞑るグレン様。私は昨日のことを思い出し布団を手繰り寄せ赤くなる。


「おはようございます…グレン様…昨日…グレン様が酔って私を……」


「ひいー!聞きたくない!!」

 と涙目だ。しかしもう事は終えたのでシーツを見せつけて


「グレン様…私の初めてを奪って置いて逃げるのでしたらそれこそ斬首刑になりますわ!」


「ひ、ひいいいいい!!それだけは!!僕何も覚えてないんですうう!!」

 と言うグレン様。


 私はベッドから降り近づくとグレン様が怯える。


「でももうここにもうグレン様のものが…♡」

 とお腹に手を当てぽっとするとグレン様が赤くなりまたうめいた。


「そ、そうだ!洗浄魔法を!!」

 させるかああああ!

 とタックルするように抱きついた。


「うぐっ!」

 そこへ朝食を持ってきたメイド達に見つかり悲鳴が上がり大騒ぎになった。


 結局お父様達に呼ばれてグレン様はげっそりし斬首刑を思い浮かべて涙目であったが私はにこにこして


「お父様…グレン様との結婚を許してくださいませ♡カボチャの悪魔からの古代の呪いを解いた英雄のグレン様と私の事をまさか反対などなさらないですわね?」

 と言うと圧を感じてお父様は


「むごご…それは…まぁ…わしに反対など……むごむご…」

 と言う。サジェリーンお姉様は額を抑え


「バカ妹…」

 ともう諦めている。シルバーワンドの皆様は拍手していたがグレン様のお父様だけはムッとしていた。


「グレン…お前などがこの国の王になる事は無理だ!!もはや大人しく斬首刑になるより仕方ない!」

 と言い出した。グレン様も青ざめてうなづいている。


 慌ててお父様が


「いや国を救ってくれた英雄にそんな真似できない!……ど、どうか娘と婚約を…」

 とついに折れた。


「あれほど女には気を付けろと言って置いたのに!バカ息子め!」

 とグレン様のお父様が睨む。

 カボチャの悪魔の長い長い悪夢から覚めた国民は嘘のように生活からカボチャを消していた。


「お父様!結婚の前に私…他の国々を回りたいですわ!シルバーワンドの皆様と一緒に!


 今まで閉じ込められていたようなもので世間を知りませんし悪魔の呪いを解いた私の願いは何でも叶えてくださるのですよね?」

 と笑顔で脅すとお父様は苦い顔をして


「う、うううむ…好きにするが良い。旅の資金も渡そう」

 とたっぷりの金貨の箱をグレン様のお父様の前に差し出すとシストン様は目を開きゴクリと唾を飲む。


「ととと、父さん??」

 とグレン様が言うとコロリと態度を変えて


「グレンよ…仕方ない。王女を酔って襲い純潔を奪ったお前には選択肢などない!この金…いや…王女は預からせていただき旅に同行させてもいい。婚約者同士仲良くするように!」

 と言われグレン様が顔面蒼白になりハクハクと息をしている。


 *

 こうして大量の金貨やついでに私とグレン様は豪華な馬車をあてがわれシルバーワンドの皆様と旅を始めた!!

 初めてこの国を出て景色を眺め花を眺め他の街や村に行き私は少女のように目を輝かせた。


 夜はグレン様は観念したのか大人しく同じ布団に入りジッとして手を出さなかった。紳士さが素敵すぎるのでおやすみのキスだけは約束させ毎晩濃いキスをした。


 *

 そして3年後…乳母車に赤ん坊を乗せ…私とグレン様は国に戻りお父様達は目を丸くしていた。


「うふふー!お父様皆様ただいまー!私の子のグライドですわ!」

 と可愛らしい息子を披露したのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カボチャの国の王女は魔術師の嫁になる 黒月白華 @shirofukuneko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ