第7話 カボチャ愛

「とにかくルーシー!良い人が出来たならちょうど良いわ!直ぐにこの国を出て!」

 とサジェリーン姉様が言う。


「だから!私だって流石に家族や国民達を黙って悪魔に見殺しにされるのを見てられないわよ!それなのに姉様達は死んでもいいなんて!!おかしいわよ!」

 と言うと皆恍惚な顔をして宰相のおっさんジルバも


「ルーシー王女…我々は別にカボチャの悪魔様の為ならこの命無くとも構わない!」


「そうだよルーシー。悪魔様に潰されるなら本望だよ」

 とお父様。


「ルーシー…皆幸せよ?この国が今日で終わっても悔いのないように毎日生きてきたの…国民達も毎日毎日今日の為に生きてきたんだわ」

 とお母様。肩にグレン様の手が置かれ…


「王女様…皆さんは強力な洗脳魔術で心を支配されているみたいだ…。僕ではとても解けない強力な洗脳魔術です。そして微かにあのカボチャの悪魔の待つ魔力を感じます……。


 あの悪魔を倒したら…もしかしたら皆元に戻るのかもしれません」

 とグレン様が真剣な顔で言う。うぐっ!至近距離での真剣な姿も素敵♡

 このまま掻っ攫われたい!


「ルーシー様…お二人とも…王宮への秘密の通路をとりこの国から脱出してください!」

 といつのまにか侍女マギーが手招きしている!!くっ!


「グレン様!透明魔法を!あの悪魔を倒しましょう!皆を元に戻すの!」


「ルーシーバカなことをするでない!大人しく国外に出なさい!」

 と父の命で騎士達か動き出した!

 グレン様は私と手を繋ぎ呪文を唱えて姿を消した。


「どこにいる!ルーシー!!捕まえろ!あの二人を捕まえて国外に出すのだ!」

 と何もないところを指差すお父様達を無視して私達は手を繋ぎ駆け出した。グレン様に手を繋がれるなんて嬉しすぎる!


 でも今はあの悪魔を倒さねば!


「こっちです!グレン様!塔の上に大砲がありますわ!!」


「え…!?わ、わぁ!!?」

 とグレン様を引っ張り塔へと続く回廊を走る!塔への階段の下に衛兵達がいた。とりあえず廊下に並んでる鎧達の中の一人が持っている剣を振り上げると


「わっ!何だ!?え?王女!?」

 と手を離しているので姿が見えている私に戸惑う兵士達!


 私は小さい頃から騎士団長エルウエットから剣を習っていたことがあった。


「はあああああーっ!」

 衛兵達は狼狽え隙ができ急所をついたら気絶してくれた!


「グレン様さあ!」

 と手を伸ばすと恐る恐る握り返してくれた。やだ!私達愛し合ってるみたい!!


「ひええ…王女様お強い!!」


「グレン様は私が守ります!」

 と言うと


「……普通逆だけど攻撃魔法の使えない僕より王女様の方が強いからいいのかな?」


「ああ…一生私が守りますわ!」


「な、何言ってるんですか!僕なんて…弱くてポンコツな魔術師なので…」

 と言うグレン様に


「そんな事はありませんわ!全て片付いたら子供を作りましょうね!」

 と言うとグレン様が引いた。


「……よくわからない…。何で僕が…父さんの言う通り顔がマシだからか!?」

 と呟かれたが顔はもちろん声もいいので好きである!


 *

 一方町外れの墓地てはシストンとマーカスがカボチャの悪魔を見て団員達と話し合っていた。


「グレン達が来ないし…あんな化け物が現れて街を次々と破壊されていく!どうする!?」


「このまま見ていても胸糞が悪い!」

 とマーカスも街の人々が喜んで殺されているのを見ていた。


「仕方ない…皆…あれを倒そう!街の皆を守るんだ!」

 シストンは拳を握りしめる。


「確かに…洗脳されたままにしとくのもな…」


「ああ…皆手伝ってくれ!」

 と他の団員達も攻撃のできる者、回復のできる者と分かれて準備しているとふいにドカアンとカボチャ悪魔の顔の左に何か大砲のような弾が命中した!


「!?一体誰が!?この国の連中が攻撃するなんて…!?」


「……いや…一人だけいる。しかもあの射程距離から考えて間違いなく王宮からだろう。大砲なんてそこしか無いし…ルーシー王女とグレンだ!」

 とシストンが言うとマーカスもうなづいた。


「俺達もやるぞ!!」

 とシストンやマーカスに団員達も攻撃魔法を使いカボチャの悪魔に次々と攻撃を仕掛けていると…


「あそこだ!いたぞ!!我らの神に何をするかー!」

 と鍬や包丁に武器を持った街の人々の軍勢が睨みを利かしながらこちらに近づいてきた。


「ちっ!めんどくせえ!!」

 とマーカス達は応戦体制に入る。


 *

 一方で塔の上でもどんどんと扉を壊されそうな感じでお父様が


「ここを開けなさい!ルーシー!!今すぐ攻撃をやめなさい!!」


「誰がやめますか!!あいつを破壊して吹き飛ばしてやるわ!!」

 積年のカボチャへの憎しみを解き放つべくドンドンと大砲を撃つ私に対しグレン様は必死に扉が開かないよう魔法で押さえ込んでいた。


「ううう!はぁ!もうほんと…疲れるうう!何で僕がこんなこと…でもここが開いたらもしかしたら斬首刑かもしれないし!!わあん!」

 と泣きつつも魔法で頑張っていた!

 あの悪魔を倒したら勝利したお祝いにグレン様と抱き合い愛する熱烈なキスをしないと!と妄想が脳内でくり広がる中大砲をぶつけまくった。


 下の方では魔法が見え誰か攻撃していた。


「もしかしてグレン様達の魔術師楽団の皆さんが?」

 この街の連中なら悪魔に手を出さないだろうし!サポート助かるわ!!


「行くわよ!愛のために!あの悪魔をぶっ倒す!!」

 と私はカボチャ悪魔に大砲を撃つ!

 しばらくすると左足がガクンと落ち体勢を崩す悪魔。もう少しだわ!!


 というところでなんと大砲の球が切れた!!


「うそぉ!!」

 流石に青ざめた。どうしよう。

 困っているとグレン様が震えながら


「くっ!!」

 と片方の手を突き出し魔法で大砲の球を出現していく!!凄いわ!!


「グレン様頑張って!!」

 私は扉を抑えに行く!部屋で筋トレしといて良かった!

 というか扉を開けて思い切りその場にいたお父様をぶん殴り


「ぎゃあ!!」

 と階段から落ちそうになる所を兵士たちが止めた。


「な、何をするかー!!」

 とお父様が怒っている。


「うるさい!黙って見てらっしゃい!これ以上私とグレン様の共同作業を邪魔すると殺すわよ!!」

 と言い放ち倒した衛兵から奪った槍をぶん回して威嚇した。


「王女様おやめください!!悪魔様が可哀想です!!」


「ふん!絶対倒してやるわ!!」

 バンと扉を閉めると魔法でいくつか作った弾でゼェハァ言いながらグレン様が膝をついている!光る汗が美しい!!

 あ、汗が服の中に!ぎゃあああカッコいいい!エロいいい!!

 と悶えつつも


「お疲れ様です!グレン様交代ですわ!」


「えっ!?」

 と言うと扉をまたグレン様に預けて攻撃を再開した!!

 そこにカボチャの頭がとうとう粉砕した!!

 胴体だけになりよろよろする悪魔!街からは別の意味の悲鳴が上がっていた。

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