第6話 カボチャの悪魔

「お菓子を貰ってくれなきゃ悪戯しちゃうよ」

 家々を回る子供達はお菓子を押し付けて楽しそうにカボチャの衣装を着てこのイベントを楽しんでいた。

 夜が耽ると大人たちの時間になり仮装した恋人が悪戯をしにくる。


 ルーシーは部屋で今かと待ち侘びていた。


「…どきどきしてきた。上手くできるかしら?」

 と何度もわざと転ぶ練習をした。


「き、今日…グレン様と一つに…ぐふふ」

 とニヤけているとコンコンとノック音!!


「来た!!」

 と飛び起き大きな胸が揺れた。

 グレン様の為だけに胸がぎりぎり見えそうな薄いドレスを纏っている。転んだらアクシデントでポロリと脱げそうな仕掛けだ。


 慎重にドアを開けると仮装し…というかおそらく魔術で作った本物の獣耳と尻尾をつけたグレン様がいた!!


 ぎょわーーー!!可愛い!!何これ?

 猫?猫なのかしら??


「い、いらっしゃいませグレン様…」


「……どうも…」

 中には入り見えない何かを引っ張った後鍵をがっちり閉めた。

 グレン様は何か唱えると透明魔法が解け、私そっくりの魔導人形が現れた!


「凄い!完璧ですわ!!私にそっくり!」


「後はこれの足の裏に王女様が手を当てれば性格がコピーされます」

 と言う。成る程凄いわね。


 でもその前に…


「……とにかく早くコピーして立ち去りましょう…」

 と促すグレン様にわざとらしく


「あっ…立ちくらみ!」

 と彼に縋ると同時にわざと足を引っ掛けた。体制を崩すグレン様!


「わっ!!あぶな!」

 よろけて二人もつれ合うように倒れた拍子にボロンと薄い服の胸がずれて黒の魅惑的な下着をつけた胸が露わに。


「きゃっ…ごめんなさい…」

 と謝るとグレン様はジッと谷間を見た。いやん!そんな見つめないで!?いやもっと見て?うふふ。

 と思っていると


「……こんな薄い服で出かけられません?マシな服を…」

 と指をパチンと鳴らしたと思うと私の服が光り分厚い生地が私の身体を覆い始め…見事な黒っぽいフード付きの服になった!!


「ええ!?」

 首元までガッチリボタンが嵌まっている。


「これで大丈夫。さ、早く足の裏に手を」

 とグレン様が私の上からどこうとする。

 くっ!計画が台無しだわ!!


「待ってくださいグレン様!!」

 わしっと顔を両手で掴む。


「……?な、何ですか??」

 とビクビク怯えた顔になる。


「……あの…まだ時間があるのでゆっくり出来ますよ…」


「いやでも…早く落ち合い場所まで行かないと。街では一晩中騒いでる人たちがいるから朝になる前に出かけないと」

 と言うグレン様。


「さ、30分でも!」


「のんびりお茶してる場合じゃないです」

 と言うグレン様に今度は私が覆い被さり


「お菓子をくれないと悪戯しちゃいますわよ!!」

 と言った。本当はグレン様に行ってもらいたかったがもはや強硬手段に及ぶことにする。


「はあ!?菓子ならポケットに…」

 と飴玉を取り出したか手でそれを一つ摘み、包みをとり口に入れる。その間グレン様の上に馬乗りでグレン様はビクビクしている。

 側にある私の人形が微動だにせずこちらを見ていた。いやん、自分の人形に見られながら?


「うふっ、甘い…グレン様も味わって?」

 と覆い被さりバタバタしているグレン様にキスをする。ビクっとして静止した隙に少し開いた口に飴玉を口移して与える。


「んぐっ!」

 と飴玉が移りグレン様は驚く。

 はあ!驚いた顔も素敵♡♡


 グレン様を押さえつけ更にキスしようとした所だった。


 コゴゴ…と地面が揺れる。


「な、何!?」


「大地が揺れている…」

 とかなりの大きな揺れにグレン様にしがみつく。


 揺れが収まる。


 のそりと起き上がるとグレン様は窓の外を見に行った。


「ふぁ!!?な、な…何だあれ!?催し物か!?」

 と驚いた声を出すので私も隣に立ち外を見ると…


 巨大なカボチャの悪魔がそこにいた!


「え!?な、何あれ??聞いてないわ!?」

 祭りの催しのスケジュールにはあんな大きなカボチャの悪魔はなかった。魔術師たちが揃ってもあんなものをこんな大人時間にやる予定はない!


「王女様も知らないのですか?」


「知らないわよ?あんなもの許可した覚えもないわ!姉様もお父様たちだって知らないはず」

 するとカボチャの悪魔はドシンドシンと暴れ出した!!


「ひいっ!」

 とグレン様が怯えた。

 すると戸口からガチャガチャ音がして護衛騎士が


「ルーシー様!大丈夫ですか!?緊急事態です!!!ここを開けてください!!」

 と言う。不味い!人形が!


「早く!足に触って!」

 とグレン様が人形の足裏を差し出して私は掌を当てて性格をコピーされた。

 人形は動き出し生きてるように見えた。


「王女様手を!」

 とグレン様が差し出してくれたので繋ぐ。緊急事態だと言うのに心躍る。

 呪文を唱えグレン様と私は透明になる。鍵を開けると護衛騎士が入り人形に


「ルーシー様!緊急事態です!あの外のカボチャの悪魔が!!」

 と言うと魔導人形は微笑み


「貴方達の好きなカボチャの悪魔じゃない?何を慌てているのかしら?」


「王様たちが至急円卓の間にと!」


「わかったわ…」

 と人形は答えて騎士に着いていくのでグレン様と私も部屋を出た。


「グレン様…少しだけ円卓の間に寄り話を聞き耳しましょう」

 と透明になったまま言うとグレン様は


「わかりました…少しだけですよ。手を離したら魔法が解けますから離さないように」

 と言われ誰が離すものですか!と違い、円卓の間に急ぐと姉様のサジェリーンやお父様やお母様に国の宰相が出揃い会議をしていた。


「来たか!ルーシー!外の異常は見たろう?」

 お父様が人形を見て言う。完璧に騙されてますわね。


「はい…あれはなんなの?新手の私への嫌がらせかしら?」

 流石私のコピー人形。性格そっくりでカボチャ嫌いみたいな。


「あれは…恐れていた事態になった!予言書の通り…『祭りの夜更け…偉大なるカボチャ悪魔が復活し街を破壊する』と」


「直ぐに攻撃の準備を!国の魔術師を集めて!騎士もよ」

 と言うと姉のサジェリーンが


「何を言うのルーシー!偉大なるカボチャの悪魔様を攻撃など!そんな酷いこと!!あ、あんな…あんな可愛いの攻撃できないわ!!」

 と言う。お父様たちもうなづいておりこいつら国の危機に何言ってんの?バカなの?


「では国があれに滅ぼされてもいいと?」


「予言書では…カボチャの悪魔様に国を滅ぼされ新しい始まりを迎えるとある。


 つまり…この国は今日…終わる…一つの節目になり生き残った者が…国を再建するという事だろう…これは決まっている事で我々が逆らうことはできない!」

 と言う。

 酷い話だ。


「そこでルーシー…貴方はこの国を出て生き延び子供を作り…いつか国を再建する為に戻ってきてちようだい」

 とお姉様は言う。お父様は重い口を開け


「その為にお前を…カボチャ嫌いの娘に育てたのだ!」

 と言った。


「な、何ですって?」

 つい手を離し魔法が解け姿を現した私を見る一同。


「お前は…」

 あーあ、バレちゃった。


「私は本物のルーシー!この子は私の身代わりの魔導人形よ!私は今夜この国から好きな人と出て行く予定だったの!!でもどう言う事なのお父様!その為に私はカボチャ嫌いに育て上げられたの!?」

 と言うとお姉様は


「は?出て行く?好きな男?どう言う事?」

 そこへ仕方なくグレン様が姿を表す。


「僕は王女様に頼まれて……し、仕方なく…すみません、斬首刑にしてください!!」

 と泣きそうになりながら言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る