第5話 恋とは何かを説明されましても

 僕は一連の出来事を父さん達に報告していた。キスされた事も伝えたら父さんとマーカスが驚いた。マーカスは


「グレン…王女様実は本気なのか??そりゃあ良かったな!あんな可愛らしい方がお嫁さんになってくれるとか!なぁ!キスはどんな感じだった!?そりゃ初めてだもんな!ひひひ」

 と背中をバシバシされて痛い。


「柔らかくていい匂いがしたけど…特に何の感情も降りてこないけど?」

 そう言うとマーカスは眉を寄せた。


「死んでるのかお前?その歳で!」

 と言うマーカスに対して父さんは


「それでいい。王女はお前の心を弄んでいるんだよ!母さんの様にな!女なんてそんなものだ!顔がいいと言うだけで中身など問題にしないのだ!いつか捨てられるしこの国を出たいだけだと言うことを覚えておけ!」

 と言う。


「シストンよぉ?お前バニラさんに捨てられたからって息子の幸せまで奪うなよ!もしかしたらグレンに良い人ができた時にお前は反対するのか?」

 と言うと父さんは


「もちろんする。女の言うことは信用しない!私の二の舞にならない様結婚は阻止させてもらう!!」

 と言い切った!!マーカスさんはため息をつき


「このバカが!まずお前が新しい奥さんを見つけることが先だな!


 それはともかくグレン!飲みに行こう!おじさんがたーっぷりと恋とは何かを説明してやろう!」


「余計なことをグレンに吹き込むな!マーカス!グレンは私の息子だぞ!どうせ恋人にするなら男にしろ!!」

 とか言い出した!!


「アホかお前!何を気持ち悪いこと言ってやがんだ!!やめろ!鳥肌立つ!まさか俺のことをそんな目でみてるんじゃないだろな!?ひいい!!」

 とマーカスは身震いした。


「誰がお前なんぞに恋するか!アホはお前だマーカス!」

 そして父さんは不貞腐れ王女の身代わり制作をするからと追い出され僕はマーカスと酒場に行く。


 賑わっている場所はあんまり好きじゃないから隅の方のテーブルに着いた。料理や酒を注文する。

 因みに僕はお酒が苦手なので断った。

 マーカスはカボチャの入ってない料理や酒を選んだ。


「それで…本当に何も感じなかったのか?あの王女様に胸を押しつけられキスまでされて!」

 とマーカスは聞く。


「……別に何も。柔らかいことといい匂いなのはわかった…」

 と言うと


「女は皆そんなもんさ。違う!心の問題だ!心臓がドキドキしたり体が熱くなったり下半身が反応しなかったのか!!?」

 と聞かれた。


「別にしない…」

 と言うとマーカスは頭を抱え


「グレン…一応聞くが…男が好きとかないよな?シストンの息子だからってお前も多少は女が怖いとは聞いてたが…。まさか!俺はダメだぞ!!俺は女が好きなんだからな!!」

 と言う。


「…マーカスさんのことはただの魔術の師匠としか思ってないです。むしろ僕は男も女もダメかも。皆怖いです…。昔から人が怖くて…」

 とフードを思わず深く被る。この髪や瞳が悪いのだろうと思うが。


「グレン…お前は確かに昔からいじめられてきた…。クソガキ達にな。でもそれは…お前があまりにも顔がいいからだ!ムカついたガキどもにいじめられて近寄れない女達がどう声をかけようかとギラギラした目でお前を見てただけの事じゃないか!!」


「でも…ある街で女の子の集団から手作りのお菓子を渡されたことあったけど…食べたら中から髪の毛入ってて捨てたよ…酷い嫌がらせだよね…」

 と言うとマーカスはまた頭を抱えて


「そりゃおまじないだ。確かにいきすぎてるが女は呪いを好む。「自分のことを好きになってくれますように」と願いを込めて料理に髪を入れるんだ」


「嫌がらせだよ…マーカスさんたら…。僕を慰めてくれてありがとう」


「辞めろ…変な勘違いするなよ!?いいか!?グレン恋って言うのは自分からするもんだ!!本当に好きな人を見つけたら心があったかくなってその人を守りたくなるのさ!そして一生そばに居たいと思える!それが恋!」

 と説明されるが


「マーカスさんは色んな女の人とデートしたりしてるけどそれは恋じゃないの?」


「………いやそれも恋。可愛い子を見ると心が躍る!もっと一緒にいたい!一夜限りの恋もいい!燃え上がるからな!」


「は!燃える!何処が?女の人が燃やしにくるの?」

 と訳がわからないでいると肩をポンポンさせられ


「違うグレン。確かに下半身は燃えそうになるが…まぁ…恋を知らないお前には遠いかもしれないが…いつかきっとお前の下半身も燃えそうになる時が来る!」


「…え…いやだ。燃えるのは」


「あ…アホか…お前も…」

 とマーカスは呆れて酒と料理を口に運びその後ベロベロになり僕はマーカスを連れ宿屋に戻ったのだ。すると今度は父さんに呼ばれた。


 そこには魔道人形をベースに魔術を組み合わせて作られた王女そっくりの人形がいた。


「どうだグレン!渾身作だ!変なとこはないか!」


「…流石父さん!そっくり!これなら時間稼ぎくらいにはなるかも?」


「時間稼ぎ所かそっくりなのだから父さんの腕がいいんだ!バレるのは相当先だ!しかし…まだ王女の性格はよくわからないな。まぁそれは当日に王女様にこの人形のこの足の裏にある紋章に触れさせてやると性格もコピーされる様になっているから安心しなさい」


「そんなことできるんだ!凄いね父さんは!!」


「当たり前だ。父さんは昔…バニラと会う前には結構名の知れた魔術師だった。今は旅の楽団だが…だが…あの女と結婚したばかりにこんな借金を負わされ…おのれバニラめ!!


 あ、別にグレンの事は恨んでないぞ!お前もバニラに捨てられた被害者だからな!!女なんてちょっと金を持ってる奴が現れたらそっちに行くものだ!!遊ばれているのさ!!」

 とまた憎々しげに母さんを罵りだしたので僕は話題を変えた。


「ところでこの人形どうやって運ぶの?」


「問題はない。ショーでも使う透明魔法をかけておけばいいのだ!」


「成る程…そうだね…で?それから王女様を連れ出して何処に向かうの?」

 と集合場所などを決めていく。町外れの墓地なら目立たないからそこで待ち合わせらしい。そこまでは透明魔法で移動すれば完璧らしい。


「国を出たら王女は次の国や街で放置して我々はいつも通り旅を続けよう」


「でも父さん…借金はもう無くなったけどまだ旅を続けるの?」

 と言うと父さんは考えるように


「今までは借金があったから仕方なく旅を続けていたが……そうだななるべく遠くの国や村があったらそこに落ち着くのもいいのかもな…。私も足が悪い。この国で診てもらったが…やはり完治はしないようでな」

 と左足をさする。旅の途中魔物に襲われて僕を庇った時に負ったのだ。


「父さんごめんね僕のせいで…」


「いや…グレンは悪くないさ。お前は攻撃魔法が使えないんだからな」

 と言うポンコツ指摘を受ける。そう、僕は攻撃魔法が使えないポンコツだ。ショーでしか使えないポンコツだ。

 ズーンと落ち込むと父さんは


「ま、まぁ…そ、そのうちな?」

 と言われる。もう18だから望みはないけどね。

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