第4話 伝統行事を利用する

 この国のカボチャ感謝祭が週末に行われる。年がら年中感謝しているんだからどうでもいい祭りである。


 民衆はカボチャの仮面をつけたりカボチャの被り物を頭から被りカボチャ入りの菓子を持って家々を回り


『お菓子を貰ってくれないと悪戯しちゃうぞー!!』

 と無理矢理カボチャのお菓子を家の人に押し付けて帰っていく。元々のお話はとても醜いカボチャの悪魔ジャックオランタンが人間と仲良くしたくて自らの身をお菓子に入れて家々を訪れ貰ってくれない人間は悪魔に食われてしまう話だ。


「無理矢理押しつけてきて拒むと食われるだなんてやってられないわね!」

 と言うと侍女のマギーが


「とても面白いではないですか?あんまり怖すぎると子供達が泣いちゃうから可愛く悪戯と表現しているのです!」

 悪戯とは聞こえがいいが実際は助かった例もあると伝承に密かに残っており…襲われたと言うのは女性なら悪魔の子を孕ませることをしたと言うのだ。

 なのでこの国民達はもしやカボチャ悪魔の子孫達なのかもしれない。


「気持ち悪っ!!」


「またルーシー様ったら!…それより…何故私にこんなものを用意させたのです!?」

 とマギーは紙袋を渡した。


「ふふふ…あらあ!グレン様が当日「悪戯」しに来るかもしれないからよ!!」

 と紙袋の中を除く。そこには魅惑的な黒の下着が入っている。

 そう、子供達が家々を周り菓子を押し付けるが恋人や夫婦間では帰ってきた恋人は菓子を押し付けるが断ると押し倒して子供を作る行為をするのだ。

 というわけでこの日を境に子作りする夫婦やら恋人が多い。

 大人達には愛の行事である。


「あんな陰気臭い魔術師の何処がいいのやら。顔だけの性格劣悪な野郎ですよ」

 とマギーは嫌な顔をした。相変わらずこの国の人間は暗いものを嫌う傾向がある。


「うるさいわね!!試着するから出てって!!」


「ルーシー様にはもっと相応しい方がいます!!あの魔術師のことは一夜限りの事として目を瞑りますが今回だけですからね!!」

 とマギーは言う。


 計画ではこの日この行事を利用して部屋に密かにグレン様を招待しそのままベッドへ…じゃなくて私の身代わりを置き、国を逃げ出すのだ。


「そしてその後グレン様にこの下着を見ていただける機会があればいいのだけど…」

 とボソリと鏡の前でとても魅惑的な下着をつけた自分を見る。相変わらず胸がデカく揺れて嫌である。カボチャ嫌いなので昔からお肉食べてきたしカボチャ以外の栄養を取ってきた。


 この姿を見たらグレン様喜んでくれるかしら?何せこの国の男達は皆この胸が好きなのだから!グレン様も男の方だし興奮なさって私を激しく求めてくるかも!!


「や、やだあー、ダメっ!グレン様!そこは~ん♡」

 等と妄想が止まらない。あの紫の瞳で見つめられたいわ。

 でもこの前キスをしてもだいぶ無反応だった…。あの時ちょっと押し倒されるのを期待していたのだが天然ピュアで少し臆病なグレン様はキスされてもキョトンとするばかりだった。


 人から愛されたことがないと思い込んでいるのだ。実際、グレン様はかっこいいと思う!女の子達からしたら顔がいいのだから当然だ。髪色と瞳が違ったら相当モテていたに違いない。


 実際他所の国や町ではモテていたと思う!うかうかしていると国を出た時にグレン様が他の女に!と思うとグレン様の初めては絶対に私でなくては!というか絶対嫁になりたいと思うので何とかグレン様を誘惑したいところだ!!


「このまま国を出ておさらばなんてごめんだわ!」

 グレン様のお父様はきちんと手紙の返事をくれて計画に協力してくれるとの事だ。私の身代わりを製作中とのこと。


「遂にこの国を出れるし…必ずグレン様のお嫁さんになってみせるわ!!」

 と心に決めた。


 でもグレン様は今まで恋などしたことがないから私の魅力も通用しないかもしれない。キスでさえあの反応だった。パーティーでの男達は目をハートにしながら私をダンスに誘うのに。

 ま、この胸が目的でしょうけどね!

 そういう意味ではグレン様は決して自分から遅いかかるなんて事はしないと思う。


「それなら…逃げ出す前に伝統行事を利用してわざと私が転んで事に及べばいいのでは?」

 まず部屋のドアから襲ってくるフリをしたグレン様を中に招き入れて鍵をかける。そして私がわざとすっ転び心配して駆け寄ったグレン様を私が押し倒して……


「ダメだわ!私が押し倒してケダモノになってどうするのよ!グレン様に押し倒されたい!!どうせなら媚薬でも手に入れようかしら?


 …あ、でも転んだ拍子にわざとこのいやらしくも魅惑的な下着がチラ見えしたらグレン様も喜んでくれるかも??」

 と想像でにやける。


 でも一つ問題がある。

 それはグレン様がカボチャの悪魔の格好をしてくる事だ。伝統行事なのだから仕方がない。世間の夫婦や恋人達でも男性がカボチャの悪魔の変装をして襲いかかるのだが…私はカボチャ嫌いだった。グレン様の事は好きだがカボチャはね…。


 まぁ入ってきたらまず仮面を取ってもらいあの素敵な顔と声が聞ければもはや私の方が理性を無くすだろう。


「いやん♡グレン様たら!」

 と再び妄想が爆発して初めて私はこの祭りの日を楽しみにしている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る