第520話 もう、どうにでもなればいいけど、何とかできるかもしれない
その場から動かないリヒト。
俺も、動けない。まさか、聞いていないよな。聞いて、ないよな?
「あの」
「はい」
「さっきの話、本当ですか?」
「サッキノハナシッテナンデスカ」
アマリア、助けてくれ!!
これは確実に聞いていたフラグだ!
「必ず、死者が出ていると。それに、審査員が強いお方だと、聞いたのですが、本当なのですか?」
「あー、うー……。うん。ヒュース皇子の話だとそうらしいぞ。本当かどうかはわからんがな」
ここまで来たらもうダメだな。
諦めてリヒトを慰める方へとシフトチェンジしよう。
アマリアは無視だしよー!!!!
そう考えていたんだが、リヒトは意外と冷静だった。
「そうですか。分かりました」
「おっ? 取り乱すかと思ったが、普通だな。大丈夫なのか?」
リヒトが部屋の中に入り、杖を壁に立てかけた。
「はい、大丈夫です。だって、何があっても、カガミヤさんが助けてくださるのでしょう?」
「え?」
あ、そういや、言ったな。
…………まずい事になった。
「まさか、助けてくださらないのですか? 私、一人でやらないと…………」
「必ず俺が手を貸してやる。もしもの時は任せろ」
リヒトの顔が急激に青くなってきたから、咄嗟に肩に手を置き訴えてしまった。
すぐに笑顔になり「ありがとうございます!」と、元気な笑み。
ウキウキした様子で、最初に決めたベッドに座った。
「大丈夫なの?」
「…………どうにでもなれ」
なんとかするしかねぇ。
透視や、何かを使って、もしもの時はどうにかするしかねぇよ。
最悪、リンクの空間魔法を使って、リヒトの編入試験を壊す。
「はぁぁぁぁ……。エトワールは、本当に大丈夫なんだよな? なんか、夢魔法ってそこまで攻撃力が高いようには感じないんだが」
聞くけど、エトワールはプルプル震えるだけで口を開かない。
な、なんだ? なんで、震えてんだ?
「もう話していいよ、うざいことを言わなければ」
「わかりました! ひとまず、私は大丈夫ですよ! クリア条件は、相手を行動不能にすること、逆に私の専売特許です!」
アマリアが許可を出したらめっちゃ話し出すじゃん。
そうか、俺の質問に答えたい。けれど、アマリアの命令の方が重要。でも――みたいな感じの葛藤で震えていたんだな、納得。
「行動不能にする、か……。それなら、リヒトも専売特許じゃない?」
「え、そうなのか?」
アマリアの言葉にリヒトが振り向いた。
話しの流れがわかっていないグレールとロゼ姫は、出入り口の扉を閉め、中に入ってきた。
「だって、知里。君は何回リヒトに拘束されているの?」
「怒りの
「そういうこと。まぁ、そこで相手がどのような魔法を放つかに寄るけど、拘束ならリヒトでも出来ると思うよ。知里を拘束できるのだから、人が相手でも問題ないだろうし」
俺基準で考えると、そうだな。
でも、あれは怒りのリヒトの時の拘束だぞ。
普段のリヒトはリミッターがかけられているのか、怒りの
感情を爆発させないと、流石に賭けられないんじゃないか?
「と、言う事だから、リヒトは人相手におそらく
「わ、かりました。努力はします」
「リヒトは、努力する時は変に力が入って空回りするから、知里くらいの適当さでいいよ」
なんで俺の名前を出す。
リヒトは「なるほど」と、何故か手を打っているし。
「でも。私はカガミヤさんみたいに、本当に危険になった時の回避能力はありません。少し不安です」
「知里にも回避能力があれば、今まで変な事に巻き込まれなかったと思うよ」
「えぇっと、つまり?」
「この中で一番回避能力がないのは知里。だから、安心してって言っているの」
なんで俺の名前を出す。
リヒトは「なるほど」と、手を打っているし。
…………あれ、俺、さっきと全く同じこと考えてる。
「わかりました。あまり力を入れ過ぎないようにしながら頑張ります」
「うん、頑張って。今日は、もう心と体を休めるために明日の話は禁止。楽しい話をしようか」
そこで喜んだのは、もちろん女性陣。
男性陣は楽し気な女性陣に弾かれ、隅っこの方へと追いやられました。
「おかしいな。男性の方が人数が多いはずなのに、女性の圧に負けたぞ」
「女性は強いからね」
「強いですねぇ~」
「女って、怖いんだな」
アルカよ、それだとすべての女が怖い事になるからやめてくれ。
あいつらが特別なんだよ、きっと。
じゃないと、世界の男性は全員端に追いやられる結果となってしまう。
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