第431話 話が進んでいるようで進んでいない……いや、進んでいるか?

 黒髪、女か?

 に、しては、力が強すぎる。こいつ、普通じゃえ!!


「カガミヤさん!? ──っ、何で止めるんですかアマリア様!」


 リヒトが俺を助けようとしてくれたらしいが、それをアマリアが止めた……らしい。くっそ、何で止めるんだよ助けろよ!!


「~~~~~~Dragonflameダーク・フレイム、焼き払え!!」


 ちょうど出していたDragonflameダーク・フレイムに指示を出すと、大きな轟音を響かせ、俺を襲っている女を喰らう。


「避けて」


 っ、この声、聞いたことある。

 冷静な声が聞こえると、女は俺の首から手を離す。


 Dragonflameダーク・フレイムは空振り、また空中へと舞い上がった。


「ゴホッ! ゲホッ!!」

「大丈夫ですか、カガミヤさん!!」


 リヒトが駆け寄って、背中を支えてくれる。

 くっそ、なんだよ……。なんで、いきなりこんな登場の仕方をするんだよ。


「スペクター…………」

「恨みがましい視線を送るんじゃねぇよ。周りへの警戒を怠っていたおめぇが悪い。あと、こんだけの魔力を周りにまき散らしておいて、人が来ないとでも思ってんのか?」


 欠伸を零しながら、スペクターが俺の事を蔑む。

 腹が立つ、腹が立つけど、正しいから何も言えねぇ……畜生。


「それでも、襲うのはやりすぎです!!」

「敵にも同じことが言えるのか?」

「そうですが…………」


 リヒトが怒ってくれているけど、これ以上言葉が出ないらしい。

 まぁ、殺されなかったし、すぐに引いてくれたからいいけどさ。


 …………首を絞められて、こんな簡単に許す俺ってまずいか?

 今まで首を絞められる以上の事をされてきたから感覚が麻痺してしまったらしい。


「まぁ、いいわ。魔力をまき散らしていたのは俺達だしな。アシャー、消してもいいか? これ以上人が集まるのは避けたい」

「もう少し見たかったです…………」

「また今度な」


 口で言うが、今度なんて絶対にないけどな。

 それだけは口に出さないで、炎の竜魔法を消す。


 アクアも、俺に合わせて水の竜魔法を消した。


「んで、魔力につられてきただけじゃないよな、スペクター」

「当たり前、魔力だけで来る訳ねぇだろうが、めんどくせぇ事に巻き込まれたくねぇし、巻き込まれた瞬間死ぬわ」

「なんでそんなに死にたいんだ?」

「……………………カケルの件、どうなった?」


 お? ノリで聞いてみたんだが、あまり触れられたくない内容だったらしい。

 顔を逸らしてわざとらしく話題を逸らした。


「特に何も。可能性が一つ増えただけだ」

「可能性?」


 さっきまで話していた竜魔法について一応情報共有。

「へぇ」と、興味なさげ。なんだよ、聞いておいて。


「んで、そっちは新しい情報はあったか?」

「何も探してないよ。二人に見つからないように逃げていただけ」

「…………へいへい」


 エトワールとスペルから見つからないように逃げ回っていたんだな。


 あの二人は今、スペクターを探してくれているけど…………まぁ、性格に難ありだし。実力はすごいけど、今すぐ呼び戻さないといけない訳じゃないから、ほっとこ。


「それじゃ、これからは竜魔法使いを集める気か?」

「いや、それだと流石に情報が少なすぎる。それなら生気のルートを辿った方が早い」

「正しい判断だ。だが、一つだけ教えてやるよ」


 お、なんだ?


「竜魔法使い、一人だけ当たりがいる」

「え、だれ?」

「確か、元殺し屋の側近は風魔法だろ? そいつだ」

「…………アンキ?」


 俺の知っている風属性魔法はアンキだけだったから目ぼし付けていたが、まさかガチでそうなのか?


 つーか…………。


「なんで、アンキを知っているんだ?」

「側近野郎じゃねぇよ、元殺し屋の方を警戒していたんだ」


 ソフィアの方か。

 そっちを見ていたらたまたまアンキを見つけたって感じか。


「なら、なんでアンキが竜魔法を持っているとわかったんだ? やっぱり、何か他の奴とは違うのか?」

首羽骨シュウコツが悟った」

「首羽骨?」


 誰だ、それ。


「出ろ、首羽骨」


 スペクターが言うと、黒い靄が現れ、そこから出てきたのは――――俺の首を絞めていた女だった……。

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