第430話 竜魔法って、ここまで綺麗だったんだなぁ~

 竜魔法を見えるのは少し渋りたい気持ちもあったけど、情報が流石に同等じゃなかったから、見せる事にした。


 だから、今はアクアとグラースを連れて地上。

 オスクリタ海底では、流石に変に目立つし。


『やっぱり、地上って空気がきれいだよねぇ~』

(「幽霊でも空気がわかるんだな」)

『当たり前ぇ~』


 そんなことを話ながらアマリアについて行く。

 竜魔法という大きな魔法を放つのにいい場所を知っているらしい。


 んで、付いて行くと、周りは草原で建物も何もない所にたどり着いた。


「異世界ってこういう所多いよな」

「カガミヤさんが元居た場所は、なかったんすか?」

「ないな」


 ビルとか住宅街とかは沢山あったけど、何もない草原はなかった。


「はぁ、久しぶりに来ました、地上。綺麗で、美しいですね」


 アシャーは地上の空気を吸い込んで、気持ちよさそうに青空を眺めている。

 アシャーの隣にリヒトが移動して、顔を覗き込んだ。


「オスクリタ海底も幻想的じゃないですか?」

「確かに、オスクリタ海底も綺麗です。ですが、自然に触れられないのですよ。風や雨など。自然が作り出した世界を感じられるのは、やはり地上だけです」


 眼鏡の奥の瞳を輝かせ、アシャーが笑みを浮かべる。

 リヒトは目を丸くしていたけど、すぐに微笑み自然へと目を向けた。


「自然を楽しむのもいいけど、竜魔法はいいの?」

「良くないです! よろしくお願いします!」


 良くないらしいです。

 仕方がない、ちゃっちゃか終わらせますか。


 アクアには、事前に事情はアマリアから話し済み。

 たっぷり寝たからか、今は元気そうだし、ウキウキしているから今すぐにでも放てそうだな。


「それじゃ、出すぞ、アクア。一応、魔力の制御は考えろよ?」

「出しますぅ~!!! ――――Dragon・waterダーク・ワーター!!」

「人の話を聞け!!」


 あっ、アクアの周りに水が作られ始めた。

 徐々に上空へと伸び、細長い形へと変えていく。


 水しぶきを上げ、水属性の竜魔法が作り出された。


「だから、制御しろと言ったのに…………」

「アクアが魔力の制御出来ないのは分かりきっていたでしょ」


 めちゃくそでかい。

 ロゼ姫の城くらいの大きさはありそうだ。


「すごい。すごいすごい!!! これが、水の竜魔法……。透き通って、お美しい。儚い中に強い思いが込められており、目が奪われてしまいます」


 ・・・・・・あー、そう、なん、だ。

 そこまで感動するのか? …………あぁ、でも、するかもしれないな。


「なにボケッとしてるの」

「いや、そう言えば、まじまじと魔法というものを見てこなかったなぁって思って」


 改めて竜魔法を見上げてみるが、アシャーほどの感動を感じることはさすがに出来んが、確かに太陽の光に照らされて綺麗だな。


「次は知里の番ですよぉ~」

「はいはい」


 んじゃ、出しますかっ――……


「水の竜魔法と同じくらいの大きさをお願いします!」

「………………………………………………………………はい」


 そういう形で言われるんだったら、俺から出せばよかった。


「んじゃ、出すぞ。――――Dragonflameダーク・フレイム


 地面に向けていた右手を上げると、炎が地面からボコボコと黒煙と共に現れ始めた。

 赤い光が強くなり、空中へと舞い上がる。


 赤く燃え広がる炎は、空中で細長い形になり炎の竜が作られた。

 大きさは、アクアの竜と同じくらい。


 あんなに大きな魔法。今までは魔導書が無かったら時間かかっていたはずだが、すぐに作れるようになったな。

 魔力のコントロールに慣れてきたのか、体がこの世界に馴染んできたのか。


 どっちにしろ、すぐに魔法を出せるようになったのは、今までの経験とソフィアやグレールとの修行のおかげだな。


 まぁ、そもそもこの世界に連れて来られなければ平凡なサラリーマン生活を送れていたんだが、いいや。


「わぁぁ、こちらも、なんてお美しいのでしょうか。赤く燃え上がる炎は優しく、周りを包み込むような温もりを感じます。それだけでなく、内に秘めている強い光が赤い炎の輝きに直結しているような。想いが炎に現れているようにも感じます!」


 そこまで褒めてくれるなんて思わなかったな、ありがとよ。


 ただ、内に秘めている想いって、なんだ?

 別に俺、自分に正直だから何も秘めずに垂れ流しているぞ。


「二つの竜魔法が揃うと、ここまで圧巻なんだね」

「出している俺でも、つい見上げちまうわ」


 アクアとの戦闘で一度ぶつけ合った竜魔法。今では隣同士で出す事になるなんてな。


 チラッとアクアを見るとニコニコしながら竜魔法を見上げていた。


「――――?」

「あ、すまん」

「かありましたか~?」

「なんとなくだ」

「そうですか~」


 俺の視線に気づいたらしいアクアと目が合ってしまった。

 特に用事はなかったから何でもないというと、アクアはまた竜魔法を見上げる。

 さすが、視線には敏感だな。


 燃え上がる竜と、冷静に佇む竜。

 この二体が魔法の始まり、か。


 言われてみれば、今までとは異なっていたよな。

 意思があるように思えるし、他の魔法とは違う。


 精霊であるスピリトとも相性抜群だし、異質さは確かにあったよな。

 今までそれを考える余裕がなかったんだけど。


「集中するのはいいけど、周りへの意識はしっかり持った方がいいんじゃない?」


 ――――今の声!? 


「グッ!!」

「カガミヤさん!?」


 後ろから急に、首を絞められた、だと?

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