第432話 好奇心は俺をも殺すから諦めろ

「こいつが首羽骨。俺の魔法で作り出した亡霊だ」

「……………………ん? 亡霊を、魔法で作り出した??」


 ど、どういうことだ?

 グラースとはまた違うのか?


「亡霊と言うと少し語弊があるな。マシに言いすぎたわ」

「と、いうと?」

「死体だ」

「……………………ん?」

「し、た、い、だ」

「聞こえとるわ」


 し、死体?

 死体を魔法で作り出した? 


 い、意味が理解できない。

 どう解釈すればいいんだ??


「スペクターは、この世界で最も珍しい闇魔法の使い手なんだよ」

「闇魔法?」


 光魔法とか闇魔法は、ゲームとかで主にある属性の一つだよな。

 この世界では珍しいのか。そういや、今まで会ったことがなかったなぁ。


「闇属性って、外れ属性とも言われているんだよね」

「そうなの?」

「ちげぇよ」


 アマリアの説明をスペクターが否定した。

 違うの? え、なんなの?

 何も知らない俺の前でそんな対立しないで。


「でも、使い勝手悪いでしょ? 禁忌魔法が多いし。首羽骨も、禁忌魔法でしょ?」「…………」


 え、え? 禁忌魔法? それって、死者蘇生的な?

 いやいや、本当にわからないんだけど。


「おそらくその魔法は、蘇生魔法。禁忌の中の禁忌、人を生き返らせる魔法だよ」


 ……………………あぁ、例えで出したもんが当たっちまった〜。

 確かに禁忌だよなぁ〜、有名な禁忌魔法だよなぁ。


 んじゃ、この女は、スペクターにとって彼女とか姉とか妹とか。

 なんか、生き返らせたいほどの関係性だった女って事か?


 思わずスペクターを見ていると、ため息を吐かれてしまった。


「しっかりと代償も払っている」

「その代償は、なに?」

「俺の肉体」

「に、肉体!?」


 アマリアは質問しておいて、わかっていたらしい反応をしている。

 俺が大きな声を出しちまっただろうが。

 リヒトはもう、頭がショートしているらしい。


 アシャーも驚いている。

 驚くよな、やっぱり。でも、肉体と言っときながら、腕とか足は生身っぽいし、本当に渡したのか?


 まさか、体全部を渡したって感じ?

 でも、普通の人間、だよな? どういうことだ?


「首羽骨がいつまでも現世をさ迷えるように、不老不死になったって感じかな?」


 アマリアの質問に、スペクターは頷く。


「…………そういうの、あり? 普通、肉体の一部を奪われるとかじゃないの? それか、体全体を奪われて、この世から消えてしまうとか」


 今回の件は、さすがに落ち着いてはいられない。


 だって、え? 

 魔法で禁忌を犯して、死体? に肉体を渡して不老不死?

 もう、わけわかんねぇ…………。


「この世界で死んだ人がさ迷い続けるには、生者の肉体が必要だ。だが、それは何も、肉体に入り込むだけがやり方じゃねぇ」


 お、思わず隣にいるグラースを見てしまった。

 冷静に話を聞いているけど、普段笑っているから無表情になると怖いな。

 何を考えているんだ?


「…………それ、もっと詳しく聞いてもいいか?」

「俺の魔力がこいつの命となり、俺が生きていなければこいつは魔力不足で死ぬ。俺以外の魔力は適合しねぇから無理。俺の身体に入り込むと言っても、そのままだと寿命で結局死ぬ。考えた結果、俺の肉体に入り込むことは諦め、俺の身体を不老不死にした。んで、長くこの世界を生きていく方法を見つけたんだ」


 ……………………深く考えては駄目だ。

 この世界は、何でもありなんだ。そう、不老不死になって、死体と共に行動する奴が現れてもいいんだ。


 普通なんだ、そう、普通。


「――――面白いね。禁忌をそうやって利用するなんて」

「奇跡だけどな。それに、魔力がずっと吸われているから常に眠い。マイナス思考が送られるから気分が上がらん、体が重たい」


 あぁ、なるほど。だから、めっちゃ欠伸を零しているのか。

 どんだけ欠伸するんだよとか思っていたが、納得だ。


 今の説明だと、俺とアマリアの関係みたいな感じか?

 というか、今の話だと、グラースはどうなるんだ?


 今は幽体で、俺に一度とりついているから、なんとなく繋がりが出江来ているけど。

 ずっとさ迷う事が出来ないんだよな。いずれ、グラースもいなくなるって事か?


 なんか、頭が痛くなってきた。


「その話、もっと聞きたいなぁ~」

「断る。仮に話すとしたら、それ以上の協力は一切しない」

「それでもいいから話をきかっ――――」

「それだけは勘弁しろ!」


 たかが興味だけで、大事な戦力を削ろうとするなよアマリア君や!

 こいつなら絶対に話したら姿を晦ませて、逃げまくるぞ。


 現在、エトワール達から逃げているんだからな。逃げきれているんだからな!


 絶対に管理者に追われながらカケル解放し、プラスでスペクターを見つけるなんて不可能だぞ。


 だから、今はその好奇心は出さないでくれ。

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