第427話 殺し屋
二人で地上に戻ったソフィアとアンキは、人が住んでいない壊れた建物が立ち並ぶ町を歩いていた。
人里外れた町、ザデッド。
皆が言う、裏の社会の者達が暮らす町だ。
ソフィアは、年少期からザデッドで暮しており、今では慣れ親しんだ懐かしい町と思っていた。
アンキは何度か来た事はあるが、暮らしたことはない。
治安が悪く、戦う力がない者や魔力が少ない者がここに来るとたちまち奴隷扱いされたり、最悪、殺される。
普通なら近づくことすら躊躇してしまうザデットだが、殺し屋として活動していたソフィアは、何でも許されるここは治安が悪くても住みやすく、お気に入りだった。
「ソフィアさん、なんでザデッドに戻ってきたんすか? 何か用事あるんすか?」
「用事が無ければわざわざここまでくるわけねぇだろうが」
「それもそうっすねぇ~」
頭の後ろに手を回し、アンキはこれ以上何も言わずにソフィアについて行く。
周りを見てみるが、生活難で苦しんでいる人達しかおらず見ていて辛いが、アンキは慣れているためどうってことない。
余裕で歩いていると、ソフィアが一度足を止めた。
「どうしたんすか?」
「後ろ、あぶねぇぞ」
「後ろ?」
振り向くが、何もない。
何が危ないのか首を傾げていると、突如足元から魔力を感じた。
ソフィアがアンキの首根っこを掴み、後ろに跳ぶ。同時に、地面が盛り上がった。
津波のように襲い掛かる地面に、ソフィアは舌打ちを零す。
「アンキ」
「はいっす!! ――――
手を前に出すと、鎌鼬のような風の刃が複数放たれた。
風も同時に舞い上がり、津波のようにせり上がっていた土を切り、相殺させた。
「何が起きたんすかねぇ」
「歓迎されてねぇんだろうよ。歓迎されても反吐が出るからちょうどいいわ」
言いながら周りに意識を向ける。
人の気配は感じない。いや、感じさせない魔法を付与している。
アンキも魔力を探るが、見つけられない。
高度な魔法使いらしく、襲われてしまえば危険だ。だが、それくらいでは二人の余裕は崩せない。
ため息を吐き、めんどくさそうにソフィアはアンキから手を放し歩き出した。
「ほっておいていいんすか?」
「俺に用があるなら、また襲ってくるだろう。それを待つ」
言いながらソフィアは、懐から一つのイヤホンを取りだした。
片耳に付け、銀髪で隠す。
そのまま歩いていると、一つの家にたどり着いた。
唯一壊されていない、人が住んでいそうな建物。ソフィアがなぜここで立ち止まったのか、アンキはわからない。
見上げるだけで何も言わないソフィアを後ろから見ていると、やっと動き出した。
木製の建物は、玄関に行くまでに階段があるため、上る。
ドアノブに手を伸ばそうとした瞬間、隣から勢いよく弾が飛んできた。
「――――っ!」
「ソフィアさん!!」
ソフィアは反射で手を下げたため、怪我をせずに済んだ。
アンキがソフィアに駆けだした時、またしても弾が発砲音と共に放たれる。
アンキも後ろへ跳び回避したが、ソフィアに近付けない。
弾が飛んできた方向を見ると、そこには手に拳銃を持った一人の女性が立っていた。
片目を眼帯で隠し、黒髪は後ろに一つにまとめている。
黒いスーツを身に着け、茶色の瞳を二人に向けていた。
「…………ブライアという女だったか」
「ご存じなのですね、ソフィア様。光栄でございます」
「俺の後に殺し屋に入ったと聞いたが、なぜ俺を襲う?」
「命令だからです」
「命令……」と、呟きソフィアはブライアを見る。
アンキは、彼女を全く知らないため、何も言えない。
「命令は、誰からだ」
「守秘義務があります」
「それもそうだな」
そこで会話が終わると、ソフィアは耳に付けたイヤホンに一瞬触れた。
何かを企んでいる。そう感じたブライアは、拳銃の引き金を握り直し、発砲。
ソフィアは最小限の動きで避け、上に飛ぶ。
空中では身動きが取れない。「馬鹿な人」と呟き、連射。
だが、ソフィアは余裕を崩さない。
外套で弾を防ぐ。
「なっ」
「油断を見せたな」
地面に足を付けたソフィアは、ブライアの右手を蹴り上げ拳銃を飛ばす。
右足を軸にし、回転蹴り。何とか腕で防いだが、力では負けてしまい吹っ飛ばされた。
なんとか転ばずに済んだが、もう視界にソフィアの姿はない。
どこに行ったのか周りを見ようとしたが、後ろに回られており、首に腕を回される。
背中に、冷たい感触。拳銃が押し付けられていた。
「甘いな」
「――――それは、貴方では?」
ブライアは右手を下に向けた。
瞬間、地面が不自然に動き始める。
だが、ソフィアは動きを見せない。
地面を見て、アンキに視線を送った。
何かを放つ。そう感じたが、ブライアが動く前にアンキが魔法を放った。
「
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