第424話 知里はなんで、めんどくさい人としか出会わないんだろう
外に出てみたはいいけど、特に行くとこないんだよね。
というか、さすがに、この悲惨な状態のオスクリタ海底を歩き回るのは気が引ける。
アクアの水魔法は、広範囲を得意として、周り全体を巻き込んでしまう。
それにより、オスクリタ海底全域が水没してしまった。
まだ、弔いも終わっていないみたい、運んでる。
「はぁ…………」
今回の事件は、さすがに大きくなりすぎたか……。
ここから、管理者はどう動くだろう。
もう、一番の戦力だったアクアはいない。
ウズルイフは厄介だけど、戦闘になってしまえばアクアと知里がどうにかできるだろう。
クロも、単体ではそこまで強くは無い。
元々、援護が得意であり、自分が前戦に出るなんて考えていないだろうなぁ。
クロヌが表に出るのも、そう遅くはないかも。
そうなる前に、ダンジョンを攻略して、カケル=ルーナと合流したい。
戦力は、確実に上がるし勝てるだろう。
上手く二手に分かれ、こっちの都合のいいように事を進められるといいな。
まぁ、なるようにしかならないし、流れるがままに動くしかないんだよねぇ。
「あれ?」
星屑の図書館にたくさんの人が集まってる。
…………そうか。星屑の図書館は、沢山の情報が集まる場所だし、大事にしていきたいよね。
洩れてはいけない情報とかもあるだろうし、あまり壊されていないにしろ、最初に手を付けたくなるのも無理はない。
さて、手伝いに入ろうかな。
下に向かって、図書館を直している海底人に声をかけようとした時、一人の女性に声をかけられた。
「ん? なぁに?」
「こんにちは、私はアシャーと言います。アマリアさんですよね?」
「…………知里と繋がりがあるの?」
黒髪おさげの眼鏡女子。
あまり見覚えないけど、僕の名前を知っているという事は、知里の知り合いという事は間違いないだろう。
『様』をつけていないし。
「チサト……。竜魔法について調べようとしていた黒髪の方ですかね? でしたら、また会う約束をしていたので、知り合いと言えば、知り合いかと思います」
「なに、その曖昧な言い方」
「一度お会いしまして。その時に交わした約束が流れてしまったのです。オスクリタ海底が水の底に沈んでしまった時にもう一度会う事が出来ましたが、あまりお話が出来なかったのですよ。なので、顔見知り程度かもしれません」
厳密に物事を考えるタイプなのかな。
どっちでもいいけど。
「それでなんですが、少々お願いしたい事があり、声をかけさせていただきました。よろしいでしょうか?」
「駄目だと言ったら引いてくれるの?」
「引きませんよ?」
「…………なに?」
引かないのなら、なんでわざわざ聞いたの。
聞かなくてもいいじゃん、普通に話しなよ。
「先程も言った通り、竜魔法についてお話しするという約束が今、流れてしまっている状態なんですよ」
「そういう事なら本人に話を通してくれないかな。捕まえるのすら大変だろうけど、そこは頑張って」
「せめて、会う事のお手伝いはして頂けませんか?」
「無理。僕、知里に恨まれたくない」
「そこを何とか!!」
眼鏡の奥が、輝いている。
絶対にこの機を逃してなるものかと言うような感じだ。
あー、もしかして、いつも知里が喰らっている他人からの頼みごとなのかな。
知里視点に立つとこんな感じなんだなぁ、本当にめんどくさくて嫌になる。
「どうか!! お願いします!!」
「……………………バイバイ」
「あっ、待ってください!!」
何とか掴まれる前に上に回避。飛行魔法は持っていないみたい、そこは助かったなぁ。
「悪いけど、ズルはしない方がいい」
「なら、本当にせめて!! 今、カガミヤさんはどこにいるんですか!?」
居場所ねぇ。
まぁ、知里にとってはマイナス情報だろうけど、これを伝えるのは別にいいか。
可哀想だし、なんか、必死そうだし。
…………聞いたからと言って、そう簡単に行けそうにないしね。
「知里なら、クラール家の城にいるよ。オスクリタ海底に滞在している時は、そこを寝床として使っているからね」
それを聞いたら諦めるかなとも思ったけど、何故か目を丸くして「クラール家の……」と、ぼやいている。
何か思い当たる事でもあるのかな?
まぁ、それを聞いたらまた話が長くなるだろうし、辞めておこう。
さて、手伝う事もこれでできなくなった。
生き残っている海底人が皆で協力して、海底を復旧しているしね。無駄なく、迅速に。
僕が入って邪魔する訳にもいかないし、上空から見つつ、大変そうな所だけ手伝うかな。
パトロールってやつだね、頑張ろう。頑張ることないけど。
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